増額地代額の算定において、賃借人が土盛りしたことを斟酌しなかつたことが違法でないとされた事例
判旨
賃借人が借地に対して土盛りを行った事実があっても、その一事をもって直ちに、裁判所が認定した相当地代額が不当であるとして違法とされることはない。
問題の所在(論点)
借地人が土地に土盛り等の改良を施した事実がある場合に、その事実を考慮せずに(あるいは考慮が不十分な形で)認定された地代額は、直ちに違法となるか。
規範
地代確定にあたっては、土地の公租公課、地価の上昇、近隣の地代水準等の諸般の事情を総合的に考慮して、その時宜における相当額を決定すべきである。借地人による改良行為(土盛り等)の存在は、地代算定の一要素となり得るものの、当然に算定額の違法性を基礎付ける決定的な要因とはならない。
重要事実
上告人(賃借人)は、昭和10年頃に本件土地に対して土盛りを行った。その後、地代の額が争点となった事案において、原審(控訴審)は一定の地代額を相当と認定した。これに対し上告人は、自ら土盛りをして土地を改良した事実が地代額の算定において適切に反映されていない旨を主張して上告した。
あてはめ
判決文によれば、上告人が昭和10年頃に土盛りをした事実は認められる。しかし、原審が確定した事実関係に基づけば、当該土盛りの事実があるからといって、原判決が認定した地代額が不相当であるとはいえない。土地の利用価値や管理状況、経過年数等を含む諸般の事情を総合した結果、原審の地代認定は妥当な範囲内にあると判断される。
結論
本件上告は棄却される。賃借人による土盛りの事実のみをもって、裁判所が認定した地代額を違法とすることはできない。
実務上の射程
借地借家法11条(地代等増減請求権)に基づく相当賃料の算定において、借地人による有益費支出や改良行為が考慮要素の一つとなり得ることを示唆しつつ、その考慮の程度は裁判所の裁量的判断(事実認定)に委ねられることを示す事例判断である。実務上は、改良による価値上昇分を地代に反映させるべきとの主張に対する反論として、総合考慮の枠組みの中で位置づける際に参照される。
事件番号: 昭和42(オ)1010 / 裁判年月日: 昭和43年7月5日 / 結論: 棄却
借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合、裁判所は同条所定の諸契機を考量し、具体的事実関係に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、底地価格に利子率を乗ずる算定方法(土地価格の利廻り算定方式)も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法が他の合理的算定方法に比して本則であるとまで解すべきものでは…