抵当権設定登記の抹消を反対給付の内容としてした被担保債権の供託は無効である。
同時履行の関係にないものを反対給付の内容とした供託の効力
民法494条,供託法10条
判旨
債務の弁済と抵当権設定登記の抹消手続は同時履行の関係にないため、抹消登記を反対給付の条件とした供託は、債務の本旨に従ったものとはいえず無効である。
問題の所在(論点)
債務の弁済と抵当権設定登記の抹消手続が同時履行の関係にあるか。また、同時履行の関係にない事項を反対給付の条件としてなされた供託が、民法494条の弁済供託として有効か(債務の本旨に従った提供といえるか)。
規範
1. 債務の弁済と当該債務担保のための抵当権設定登記抹消手続は、同時履行の関係(民法533条)にない。 2. 弁済者が本来同時履行の関係にない義務を反対給付の条件として供託を行った場合、その供託は「債務の本旨に従った」ものとは認められず、債務消滅の効力(民法494条)を生じない。
重要事実
債務者が債権者に対し、債務の弁済をするに際して、債権者に課されている抵当権設定登記の抹消登記手続を「反対給付」として付した上で、弁済額を供託した。債権者はこれに対し、同時履行の関係にないことを理由に供託の有効性を争った。
事件番号: 昭和41(オ)1284 / 裁判年月日: 昭和44年7月3日 / 結論: 棄却
甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であつても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、先順位抵当権者は、甲不動産の代価から自己の債権の全額について満足を受けることができる。
あてはめ
まず、抵当権は債務の完済によって消滅する付随的な性質を持つものであるから、弁済が先行すべきであり、抹消手続と弁済は同時履行の関係にない。次に、供託法10条によれば、反対給付が条件とされている供託物を受領するには履行の証明を要するところ、本件では、債務者が本来先履行すべき債務の弁済について、同時履行の関係にない抹消登記手続をあえて反対給付の内容として供託を行っている。このような不当な条件を付した供託は、債務の本来の態様に従った履行の提供とは評価できない。
結論
本件抵当権設定登記の抹消を反対給付の内容とした供託は、債務の本旨に従ったものとはいえず無効であり、債務消滅の効力は生じない。
実務上の射程
弁済と抹消登記手続の先履行関係を明示した重要判例である。答案上では、民法494条の要件(債務の本旨に従った提供)を論じる際、不当な反対給付条件の付加が供託を無効にする根拠として引用する。また、保証人による代位弁済と証書返還の関係など、他の同時履行・先履行の場面との比較でも参照される。
事件番号: 昭和26(オ)576 / 裁判年月日: 昭和32年9月5日 / 結論: 棄却
消費貸借上の貸主が、借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことが認められない限り、利息が月一割と定められたという一事だけでは、この約定を公序良俗に反するものということはできない。
事件番号: 昭和41(オ)94 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
通常共同訴訟人の一人が他の共同訴訟人に対する判決の瑕疵を主張することは上告適法の理由とならない。
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。