甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であつても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、先順位抵当権者は、甲不動産の代価から自己の債権の全額について満足を受けることができる。
先順位共同抵当権者が抵当権の一部を放棄した場合における次順位抵当権者との優劣
民法392条,民法504条
判旨
債務者所有不動産と物上保証人所有不動産に共同抵当権が設定され、債務者物件に後順位抵当権者が存在する場合、物上保証人は後順位抵当権者に優先して代位権を行使できる。
問題の所在(論点)
債務者物件の後順位抵当権者と、代位弁済した物上保証人(または連帯保証人)との間で、債務者物件の売得金からの配当優先順位がどのように決まるか。特に、後順位抵当権者の代位期待(392条2項)と物上保証人の代位期待(500条)の優劣が問題となる。
規範
共同抵当において、債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産(第三者所有)がある場合、両者の代位の期待が衝突したときは、物上保証人の保護が優先される。物上保証人は、債務者所有の物件から求償権の満足を得ることを期待しており、その後に当該物件に後順位抵当権が設定されたことでその期待を失わされるべきではないからである。したがって、この場合、後順位抵当権者は民法392条2項による代位を主張できず、共同抵当権者が物上保証人物件の抵当権を放棄しても、後順位抵当権者は何ら不利益を被らない。
重要事実
銀行Dは主債務者Eの債務を担保するため、E所有の不動産(第一物件)と、連帯保証人兼物上保証人である被上告人所有の不動産(第二物件)に共同根抵当権を有していた。上告人は、第一物件について後順位の抵当権を取得した。その後、被上告人が債務を完済して代位弁済したため、第一物件の根抵当権を移転し、第二物件の根抵当権を抹消(放棄に相当)した上で、第一物件の競売を申し立てた。後順位抵当権者である上告人は、被上告人の優先弁済権を争った。
事件番号: 昭和41(オ)214 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 破棄差戻
通常の共有の場合、抵当権設定契約が共有者全員の同意に欠けるため、共有物自体について抵当権設定の効力を生じない場合でも、特段の事情のない限り、同意をしない共有者を除き、右抵当権設定契約をした共有者の各共有持分について抵当権を設定したものと解すべきである。
あてはめ
本件では、物上保証人である被上告人と、債務者物件の後順位抵当権者である上告人の代位の期待が衝突している。物上保証人は本来、債務者物件から求償を得る地位にあり、上告人はその後に抵当権を設定したに過ぎない。規範に照らせば物上保証人の代位が優先されるため、上告人はそもそも第二物件(物上保証人物件)に代位する地位にない。したがって、被上告人が第二物件の抵当権を抹消しても、上告人の代位権を侵害したことにはならず、被上告人は第一物件の売得金から求償権全額について優先弁済を受けられる。
結論
物上保証人(被上告人)は、債務者所有物件の売得金から、後順位抵当権者(上告人)に優先して自己の求償権全額の支払を受けることができる。
実務上の射程
民法501条3項5号の明文化(平成16年改正)に先立つ重要判例。債務者物件の次順位抵当権者と物上保証人の優劣において「物上保証人優先」を確立した。答案では、共同抵当における代位の優先順位を論じる際、392条2項と501条の関係を説明する根拠として用いる。
事件番号: 昭和41(オ)633 / 裁判年月日: 昭和41年9月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記の抹消を反対給付の内容としてした被担保債権の供託は無効である。
事件番号: 昭和32(オ)420 / 裁判年月日: 昭和34年6月25日 / 結論: 棄却
主たる債務者の委託を受けた保証人が将来免責行為をしたときに取得すべき求償権を担保する為に、主債務の額を極度額とする根抵当権が設定されていた場合、その保証人は、主債務の弁済期の到来後は、まだ免責行為をしてなくても、先順位抵当権による競売手続において極度額まで配当要求をなし得る。