通常の共有の場合、抵当権設定契約が共有者全員の同意に欠けるため、共有物自体について抵当権設定の効力を生じない場合でも、特段の事情のない限り、同意をしない共有者を除き、右抵当権設定契約をした共有者の各共有持分について抵当権を設定したものと解すべきである。
共有者全員の同意に欠ける抵当権設定契約の解釈
民法251条
判旨
共有者の一部が全員の同意なく共有不動産全体に抵当権を設定した場合、不動産全体への効力は否定されるが、特段の事情のない限り、同意した共有者の持分については抵当権設定が有効に成立する。
問題の所在(論点)
共有者の一部による同意を欠いた抵当権設定契約において、同意した共有者の持分についても抵当権設定の効力が否定されるか、あるいは持分の範囲で有効となるか。
規範
共有物の変更(民法251条)および処分には共有者全員の同意を要するため、全員の同意を欠く抵当権設定契約は不動産全体については効力を生じない。しかし、各共有者は自己の持分を自由に処分できるため、共有者全員の同意に欠ける場合でも、特段の事情のない限り、同意した共有者の持分については抵当権設定が有効に成立すると解すべきである。
重要事実
上告人(抵当権者)は、被上告人ら(B1、B2)の共有不動産につき、債務者Dの債務を担保するため抵当権設定契約を締結し、登記を完了した。しかし、共有者の一人であるB1はこの契約に関与しておらず、B2が独断で、またはB1の委任を受けずに契約を締結していた。被上告人らは、全員の同意がない以上、抵当権は無効であるとして、抵当権の不存在確認および登記の抹消を求めて提訴した。
事件番号: 昭和34(オ)321 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: その他
貸金債務担保のために債務者所有の不動産に抵当権設定登記がなされた後、債務者においていつたん右債務の元利金を弁済し、さらに翌日同一債権者より同一金額を、弁済期の点以外はすべて旧債務と同一の条件で借り受け、これが担保として同一不動産につき抵当権を設定し、当事者間の合意によつて、旧債務についてなされてあつた前記抵当権設定登記…
あてはめ
原審は、B1の同意がないことを理由に、民法251条に基づき抵当権設定契約全体が無効であると判断した。しかし、抵当権設定契約において同意をした共有者が存在する場合、その者の持分については個別に抵当権を設定できる。本件では、同意した共有者の持分について抵当権が有効に成立する余地を検討せず、直ちに契約の全否定および登記の全部抹消を認めた原審の判断には、民法251条の解釈誤りおよび審理不尽があるといえる。
結論
共有者全員の同意を欠く場合であっても、同意した共有者の持分については抵当権が有効に成立し得るため、その限度で不存在確認および登記抹消請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
共有不動産全体の処分が無権限として争われる事案において、持分権の範囲での有効性を認める「可分的な解釈」の根拠となる。答案上は、全部抹消登記を求める請求に対し、持分の範囲での一部認容(または全部抹消請求の棄却)を導く際のロジックとして活用する。
事件番号: 昭和41(オ)94 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
通常共同訴訟人の一人が他の共同訴訟人に対する判決の瑕疵を主張することは上告適法の理由とならない。
事件番号: 昭和41(オ)1284 / 裁判年月日: 昭和44年7月3日 / 結論: 棄却
甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であつても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、先順位抵当権者は、甲不動産の代価から自己の債権の全額について満足を受けることができる。
事件番号: 昭和32(オ)121 / 裁判年月日: 昭和33年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】意思表示の動機が、表示等により法律行為の内容とされた場合には、その動機に関する認識の不一致は「法律行為の要素の錯誤」に該当し、当該意思表示は無効となる。 第1 事案の概要:被上告人は、上告会社の社員から融資の約束を受けた。被上告人は、この融資を受けられることを前提(動機)として、本件抵当権設定契約…
事件番号: 昭和42(オ)524 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 棄却
部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第九四条第二項の適用または類推適用がない。