判旨
会社が負担した債務について、当該会社がいわゆる同族会社であるという一事をもって、当然に株主等の同族各個人の債務として認定されるものではない。また、民法110条の権限外の表現代理が成立するためには、前提として相手方に基本代理権が存在することが必要である。
問題の所在(論点)
1.同族会社が負担した債務について、構成員個人が当然に責任を負うか。 2.民法110条の表見代理が成立するために、基本代理権の存在は必要か。
規範
1.法人の独立性:会社が負担した債務は法人の債務であり、法人が同族会社であるからといって、当然にその構成員である個人が債務を負担するものではない。 2.権限外の表見代理(民法110条):本条の適用にあたっては、代理人と称する者に、本人のために法律行為をなしうる基本的な代理権が存在することを要する。
重要事実
上告人は、訴外会社および訴外Dに対し50万円を貸与した。上告人は、当該会社がいわゆる同族会社であることを理由に、その債務は同族各個人の債務であると主張した。また、訴外Eとの間で更改契約が締結されたと主張し、仮にEに権限がなかったとしても民法110条の表見代理が成立すると主張して、被上告人に対して責任を追及した。原審は、Eに基本代理権を認める証拠がないとして、表見代理の成立を否定した。
あてはめ
1.同族会社性の影響:訴外会社が同族会社であるという事実は、主要事実の証明手段となる間接事実にすぎない。法人は独立した権利義務の帰属主体であり、同族会社であるという理由だけで個人に債務を帰属させることはできない。 2.表見代理の要件:訴外Eには、被上告人から民法110条適用の前提となるべき基本代理権が付与されていたと認めるに足りる証拠がない。したがって、相手方が更改契約を締結したか否かの点を判断するまでもなく、同条の成立要件を欠く。
結論
1.同族会社であることのみを理由に個人が債務を負うことはない。 2.基本代理権が認められない以上、民法110条の表見代理は成立しない。
事件番号: 昭和39(オ)76 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
一 復代理人を選任しえない場合に、原審が復代理人が適法に選任されたと判断したことは違法であるが、原判示事実関係(原判決理由参照)に照らせば、代理人が復代理人としてではなく自己の代理人を選任したものと解する余地があり、右代理人の代理人について代理人のため、また、代理人について本人のため、順次民法第一一〇条の表見代理が成立…
実務上の射程
法人格否認の法理が確立する前の判例であるが、会社と個人の別人格性を強調する文脈で活用できる。また、民法110条の論述において「基本代理権の存在」を第1要件として定立する際の根拠として重要である。実務上、同族会社であることを理由とした責任追及には、単なる同族性以上の事情(法人格の形骸化や濫用)を主張立証する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和33(オ)530 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権代理人による法律行為について、相手方が代理権を有すると信ずべき正当な事由がある場合には、民法110条の表見代理が成立し、本人に対してその効力が生じる。本件では、公正証書の作成および消費貸借契約の締結に関し、正当な事由があると認定された原審の判断が維持された。 第1 事案の概要:上告人の代理人と…
事件番号: 昭和38(オ)75 / 裁判年月日: 昭和39年1月24日 / 結論: 破棄差戻
甲が乙からその所有株式を担保権設定のため借用したことを認定しながら、他に特段の事情を判示することなく、右担保権設定について乙が甲に代理権を授与した事実が認められず、その他甲が乙のためなんらかの代理権を有していたことが認められないと判示した上、結局基本代理権たる代理権の存在が認められない以上表見代理の法理適用の余地がない…