賃貸借契約中の賃借人のする転貸等については賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約は、合理的な目的をもつてされた法律行為の方式の制限についてのものとして、有効である。
賃貸借契約中の賃借人のする転貸等については賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約の効力
民法91条,民法第3編第2章第1節,民法612号
判旨
賃貸借契約において、賃借人が転貸等を行う際に賃貸人の書面による承諾を要すると定める特約は、法律関係の明確化と将来の紛争防止という合理的な目的を持つため、有効である。
問題の所在(論点)
賃貸借契約における「転貸等には賃貸人の書面による承諾を要する」との特約が、公序良俗や憲法、あるいは証拠契約の禁止に抵触せず、実体法上の契約として有効といえるか。
規範
継続的な賃貸借契約関係において、法律行為の方式に制限を課す合意(書面による承諾を要する旨の特約等)は、法律関係を明確にし将来の紛争を避けるという合理的な目的がある限り、実体法上の契約として有効である。
重要事実
賃貸借契約の当事者間で、賃借人が転貸等をする場合には「賃貸人の書面による承諾」を必要とする旨の特約が結ばれた。その後、当該承諾の有無をめぐって紛争が生じ、賃借人側がこの特約は憲法違反や証拠法上の制限(証拠契約)にあたり無効であると主張して上告した。
あてはめ
本件特約は、継続的な契約関係において承諾の有無という重要な事実を明確化し、後日の紛争を未然に防止することを目的としている。このような合理的な目的を有する方式の制限は、私的自治の範囲内であり、実体法上の有効な合意と解される。また、これは実体法上の契約内容を定めたものであって、特定の証拠方法のみを裁判所に強いるような証拠契約(当時の民訴法185条違反)には当たらない。
結論
本件特約は有効である。したがって、書面による承諾がない転貸等は、原則として契約上の義務違反を構成することになる。
実務上の射程
不動産賃貸借の実務で一般的に用いられる「書面による承諾」条項の有効性を裏付ける判例である。答案上では、口頭での承諾の有無が争点となった際に、本特約を根拠に「書面がない以上、有効な承諾があったとは認められない」とする形式的判断を支える論理として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)1103 / 裁判年月日: 昭和33年1月14日 / 結論: 棄却
賃借家屋の一部についてなした無断転貸の期間が一ケ月に満たなかつたとしても、原判決認定の如き事情があるときは、賃貸人はこれを理由として賃貸借契約を解除しうるものと解すべきである。