貸金の催告書たる内容証明郵便、同配達証明書、仮処分申請書は、当該貸金契約の成立を直接証明すべき証書ではないから、これを証拠として排斥する理由をいちいち具体的に判示しなくても、理由不備とならない。
契約の成立を直接証明すべき証書でない書証を排斥する場合の理由説示
民訴法185条,民訴法191条,民訴法395条1項6号
判旨
裁判所が判決の理由中で証拠の排斥理由を具体的に説示すべきなのは、主要事実を直接証明するに足りる書証(直接証拠)に限られる。
問題の所在(論点)
直接に主要事実を証明するものではない証拠(間接証拠等)を排斥する場合、判決書において個別に具体的な理由を説示する必要があるか。
規範
判決において証拠を排斥する際、その理由を具体的に説示することを要するのは、それが直接に主要事実(請求原因事実等)を証明するに足りる証書(直接証拠)である場合に限られる。間接事実に係る証拠や補助証拠については、他の証拠と併せて検討し、請求原因事実を肯定するに足りない旨を包括的に示せば足り、個別の排斥理由を説示する必要はない。
重要事実
上告人は、被上告人に対して金員を貸し渡したと主張し、金銭の返還を求めて提訴した。上告人は、貸金契約の成立を裏付ける証拠として、貸金の催告書である内容証明郵便(甲1号証の1)、その配達証明書(甲1号証の2)、および工事禁止の仮処分申請書(甲2号証)を提出した。原審は、これらの書証を含めても請求原因事実を肯定するに足りる証拠はないとして請求を棄却したが、個別の書証に対する具体的な排斥理由は示さなかった。これに対し上告人が、理由不備の違法があるとして上告した事案である。
あてはめ
本件で上告人が提出した内容証明郵便は、あくまで「貸金の催告」を示すものにすぎず、配達証明書はその到達を示すものである。また、工事禁止の仮処分申請書も別個の手続きに関する書面にすぎない。これらは、本件の争点である「貸金契約の成立」という主要事実を直接証明する証書(直接証拠)とは認められない。したがって、裁判所がこれらの証拠を総合的に検討した結果、請求原因事実を認めるに足りないと判断した以上、各証拠を排斥する理由をいちいち具体的に説示しなかったとしても、審理不尽や理由不備の違法はないと解される。
結論
直接証拠でない証拠を排斥する場合、具体的な排斥理由を個別的に説示する必要はなく、理由不備には当たらない。
実務上の射程
民事訴訟法253条1項2号の「理由」の記載程度の限界を示す判例である。答案上は、直接証拠(契約書等)の排斥には具体的な説示が必要である反面、間接証拠については自由心証主義(247条)の範囲内として包括的な判断で許容されるという論理で使用する。
事件番号: 昭和31(オ)891 / 裁判年月日: 昭和32年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員の現実の支払という主要事実が認められない場合には、受領者に代理権があるか否かといった法的論点を判断することなく、弁済の抗弁を排斥することができる。 第1 事案の概要:上告人は、債権者を代理する権限があると主張するDに対し、特定の日に金員を現実に支払ったとして弁済の抗弁を主張した。しかし、原審は…