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共同占有の土地につき共同占有者に贈与がなされた場合黙示的に簡易の引渡がなされたと認められた事例
判旨
不動産の贈与において、受贈者がすでに目的物を共同占有または単独占有している場合、特段の事情がない限り、贈与契約の成立とともに簡易の引渡し(民法182条2項)がなされたものと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
民法550条但書の「履行が終わった」といえるためには、不動産贈与においてどのような状態が必要か。特に、受贈者が既に占有している場合、簡易の引渡し(182条2項)の成立を認めることができるか。
規範
不動産の譲渡において、譲受人が既に目的物を占有している場合には、特段の事情がない限り、譲渡の合意に伴い、黙示的に民法182条2項による簡易の引渡しがなされたものと推認するのが経験法則に合致する。
重要事実
上告人と被上告人は、親族および部落有志約20名の立会いのもと、互いの所有名義不動産を相互に贈与する契約を締結した。対象不動産のうち、大部分は贈与前から両者が共同占有・管理しており、一部の土地については、受贈者側が分割後に単独で耕作を開始していた。贈与の書面は作成されなかったが、被上告人は「これだけの人がいれば生証人であるから、証書は必要ない」と述べ、立会人と握手するなど、合意の成立を確信させる言動をとっていた。原審は、引渡しの事実を認めず、書面によらない贈与(民法550条)の撤回を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件では、贈与対象の土地は既に受贈者側が共同または単独で占有・管理していた状態にある。このような占有の継続がある中で贈与契約が成立した場合、当事者が引渡しをあえて差し控えたとみるべき特段の事情がない限り、契約成立と同時に簡易の引渡しがなされたと解するのが通常である。事実関係によれば、被上告人は多数の証人の前で契約の成立を喜び、書面の代替となる生証人の存在を強調していることから、引渡しを拒絶する意思があったとは認めがたい。したがって、簡易の引渡しによる「履行」があったと推認される。
事件番号: 昭和27(オ)480 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の贈与において、書面によらない場合であっても、当該不動産の所有権移転登記が完了したときは、民法550条にいう「履行の終わった」ものと解され、もはや贈与の解除をすることはできない。 第1 事案の概要:本件は、書面によらずになされた不動産の贈与について、贈与者が民法550条に基づき贈与の撤回(取…
結論
特段の事情がない限り、簡易の引渡しが認められ、民法550条但書の「履行が終わった」ものとして、もはや贈与の撤回はできない。
実務上の射程
書面によらない不動産贈与の撤回(550条)を阻止するための「履行」の認定手法として重要である。登記がなくとも、簡易の引渡しや占有改定によっても「履行」にあたり得ることを示唆しており、受贈者が既に占有している事案では本判例の推認規定が強力な武器となる。
事件番号: 昭和42(オ)30 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 棄却
共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。
事件番号: 昭和28(オ)362 / 裁判年月日: 昭和31年5月22日 / 結論: 破棄差戻
父に代り世帯主として家政一切を処理している長男が、父に無断でその所有の山林を売却した場合において、右長男がその以前にも同一相手方に対し父所有の山林を売却しその履行が無事完了されているような事実があるときは、右相手方が売主家出入りの者であつて右売買の事実につき直接父に確めなかつたとしても、相手方に必ずしも右長男に山林売買…
事件番号: 昭和31(オ)262 / 裁判年月日: 昭和32年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】父母が共同して親権を行使すべき場合(民法818条3項)において、一方が売買契約を締結する際に他方が同席して反対せず、測量等の事後行為にも立ち会っていたときは、特段の事情がない限り、共同して親権を行使したものと認められる。 第1 事案の概要:未成年者である上告人Aの不動産売買契約において、Aの母Dは…