請負代金債権に対する仮差押の効力発生後に、請負契約を当事者間の合意で解除しても、請負代金債権の消滅をもつて仮差押債権者に対抗することはできない。
請負代金債権に対する仮差押の効力発生後にされた請負契約の合意解除の効果
民法632条,民訴法598条,民訴法750条
判旨
金銭債権の仮差押えがなされた後、第三債務者と債務者が当該債権の発生原因である契約を合意解除しても、仮差押債権者には対抗できない。
問題の所在(論点)
債権の仮差押えがなされた後に、第三債務者と債務者が当該債権の発生原因である契約を「合意解除」した場合、第三債務者はその解除による債権の消滅を差押債権者に対抗できるか。民法511条(支払の差止めを受けた第三債務者の相殺の禁止)等の趣旨に照らした仮差押えの効力が問題となる。
規範
債権の仮差押えがなされた場合、第三債務者は、その後に債務者との間でなされた合意解除による債権の消滅を、仮差押債権者に対抗することはできない。これは、仮差押えによって債務者が債権を処分することを禁じられ、第三債務者が債務者に弁済することを禁じられたことにより、債権の帰属および内容を固定する効力が生じるからである。
重要事実
A町(第三債務者)とD社(債務者)との間で請負契約が締結され、D社はA町に対して請負代金債権を取得した。被上告会社(債権者)はこの代金債権に対して仮差押えを行い、その後、差押および転付命令を受けた。しかし、仮差押えの効力発生後かつポンプ等の据付け完了後に、A町とD社は当該請負契約の一部を合意により解除した。
あてはめ
本件において、請負契約の合意解除がなされたのは、被上告会社による仮差押えの効力が発生した後である。また、既にポンプ等の据付けという工事自体は了しており、債権の発生原因となる債務の履行は完了していたといえる。このような段階で当事者間の合意のみによって契約を消滅させることは、仮差押えによって債権の処分が禁止された債務者の行為に協力して債権を消滅させるものにほかならない。
結論
第三債務者であるA町は、仮差押え後になされた合意解除による債権消滅を、被上告会社に対抗することはできない。
実務上の射程
本判決は合意解除に関するものであるが、法定解除権に基づく解除については、仮差押え前に解除原因が存在していれば、仮差押え後になされた解除であっても対抗可能とするのが通説的理解である。答案作成上は、処分禁止効が及ぶ「合意」による消滅と、債務不履行に基づく「法定解除」とを峻別して論じる必要がある。
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市長が無期限で振り出した約束手形の受取人が、該手形につき単に市長に確かめただけで、市の予算の執行としてまたは市議会の議決を経たうえで右手形が振り出されたものか否か等につき調査をしなかつた場合には、右受取人には過失があるというべきであるから、民法第一一〇条所定の権限があると信ずべき正当の理由があるとはいえない。
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