国が国税徴収法により納税人の有する債権を差し押えた後においても、右被差押債権の第三債務者は、差押前に取得した納税人に対する反対債権をもつて相殺することができる。
国税徴収法による債権差押と右被差押債権の第三債務者の相殺権
國税徴收法3條,國税徴收法23條ノ1,民法505條,民法511條
判旨
国税の優先徴収権は納税人の財産から徴収する際、一般債権者に優先するにとどまり、滞納処分による債権差押え前に取得した自働債権に基づく第三債務者の相殺権行使を制限するものではない。
問題の所在(論点)
国税滞納処分として債権が差し押さえられた場合、第三債務者は、差押え前に取得していた自働債権をもって相殺し、これを国に対抗することができるか。国税徴収法2条(現行法8条)の優先権の範囲が問題となる。
規範
国税徴収法2条の優先権は、納税人の財産から徴収する場面で一般債権者に優先することを明らかにしたに過ぎない。国税徴収の確保は、納税人以外の第三者に損害を及ぼさないことを原則とし、第三者の権利を制限するには明文の規定を要する。したがって、債権差押えによって国が取得するのは被差押債権の取立権であり、第三債務者が差押え前に取得した債権を自働債権とする相殺権の行使は妨げられない。
重要事実
国(上告人)が納税人の滞納処分として、納税人が第三債務者に対して有する債権を差し押さえた。これに対し、第三債務者は、当該差押えより前に取得していた納税人に対する反対債権(自働債権)を有していたため、差押え後において当該自働債権と被差押債権との相殺を主張した。国は、国税徴収法上の優先権に基づき、一般債権者による相殺は認められず、国が優先的に徴収できると主張して争った。
あてはめ
国税徴収法2条等は、国税が一般債権に優先することを規定するが、これは納税人の財産から徴収する際の優先順位を定めたものに過ぎない。本件において、第三債務者が相殺に供した自働債権は「差押前」に取得されたものである。国は差押えによって債権者の立場を承継するに留まるため、第三債務者の既存の抗弁権である相殺権まで奪う明文の根拠はない。したがって、第三債務者が相殺によって債権消滅の利益を受けることは正当な権利行使といえる。
結論
第三債務者は、差押え前に取得した債権をもって、差押え後においても相殺をすることができ、その限度で国に対し被差押債権の消滅を主張することができる。
実務上の射程
民法511条(差押えと相殺)の原則が国税滞納処分においても同様に妥当することを確認した判例。民事執行法上の差押えと同様、国税徴収権という公法上の権利であっても、私法上の相殺の期待を当然に覆すものではないという論理は、答案上、差押えと相殺の対抗関係を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和36(オ)318 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務免除(民法519条)は、履行不能の事実から論理的に当然に導かれるものではなく、意思表示の有無を個別に判断すべきである。また、口頭による債務免除の主張については、証拠に基づきその合意の存否を認定すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、債務の履行不能の事実がある以上、そこから債務免除の事実が論…
事件番号: 昭和26(オ)576 / 裁判年月日: 昭和32年9月5日 / 結論: 棄却
消費貸借上の貸主が、借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことが認められない限り、利息が月一割と定められたという一事だけでは、この約定を公序良俗に反するものということはできない。
事件番号: 昭和26(オ)166 / 裁判年月日: 昭和34年7月9日 / 結論: 棄却
債務不存在確認請求訴訟において、原告主張の不存在事由が肯認できない以上、原告が右 事由の一として主張した履行不能による債務消滅に対する被告からの反対主張である履行 の事実が認められても、原告勝訴の判決をなすべきではない。
事件番号: 昭和26(オ)560 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: 棄却
一 一抵当権設定契約とともになされた停止条件付代物弁済契約は、特段の事由のないかぎり、代物弁済の予約と解すべきものである。 二 右の場合において、抵当権を実行するか、代物弁済の予約を完結させるかは、債権者の選択に委される。