判旨
執行力ある公正証書による債務名義が存在する場合であっても、既判力がない以上、当事者間にその効力について争いがあるときは、なお給付の訴えを提起する訴えの利益が認められる。
問題の所在(論点)
執行力ある公正証書という債務名義を既に有している債権者が、同一の債権に基づいて給付の訴えを提起することは、訴えの利益を欠き不適法となるか。公正証書に既判力がないこととの関係が問題となる。
規範
公正証書による債務名義は確定判決と異なり、既判力を有するものではない。したがって、債務名義が存在していても、その効力について当事者間に争いがある以上は、別途給付の判決を求める訴えの利益を肯定すべきである。
重要事実
被上告人(反訴原告)は、上告人(反訴被告)に対する貸金債権について、執行力ある公正証書を既に有していた。これに対し、上告人は当該公正証書の効力について争う姿勢を示した。このような状況下で、被上告人が重ねて当該貸金債権に基づき給付を求める反訴を提起したところ、上告人が訴えの利益の欠如を主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人は貸金債権につき執行力ある公正証書を有しているが、上告人はその効力を争っている。公正証書には既判力がないため、債務者は後日その債権の存否を争うことが可能であり、債権者にとって紛争の抜本的解決には至っていない。当事者間に効力に関する争いがある以上、既判力ある判決を得て債権の存在を確定させる必要性が認められる。したがって、本件反訴を許容することは民訴法の趣旨(旧231条、現行法の二重起訴禁止等)にも反しない。
結論
公正証書による債務名義があっても、その効力に争いがある限り、給付の判決を求める訴えの利益は失われない。本件反訴は適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
既判力のない債務名義(公正証書や、民事執行法上の執行証書等)を有する債権者が、紛争の終局的解決(既判力の確保)を目的として訴えを提起する場合に活用できる。ただし、債務者が一切争っていない場合には訴えの利益が否定される余地がある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和33(オ)530 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権代理人による法律行為について、相手方が代理権を有すると信ずべき正当な事由がある場合には、民法110条の表見代理が成立し、本人に対してその効力が生じる。本件では、公正証書の作成および消費貸借契約の締結に関し、正当な事由があると認定された原審の判断が維持された。 第1 事案の概要:上告人の代理人と…
事件番号: 昭和33(オ)322 / 裁判年月日: 昭和36年7月14日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地法3条の許可を停止条件とする農地の売買契約において、知事による不許可の決定がなされたときは、特段の事情がない限り、売買はその効力を生ぜず確定的に不能となる。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は上告人(売主)から、知事の許可を条件として本件農地を代金40万円で買い受け、代金を完済した。その際、…
事件番号: 昭和32(オ)749 / 裁判年月日: 昭和35年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決言渡期日に出頭した当事者が延期告知後に退廷した場合であっても、指定された新期日の告知の効力は当該当事者に及ぶ。また、弁論の公開の有無は、口頭弁論の方式に関する事項として調書によってのみ証明される。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月27日の判決言渡期日に出頭したが、言渡延期の告知を受け…
事件番号: 昭和38(オ)1093 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても、同申請書に当該抵当権の被担保債権額として元本極度額金何円なる記載がある場合、右申請書によつてなされた根抵当権設定登記は有効である。