租税債権は、法律の規定する課税要件事実の存在によつて当然に成立し、課税処分をまたない。
租税債権の成立時期
所得税法5条
判旨
租税債権は法律の規定する課税要件事実の存在によって当然に発生し、課税処分は税額を具体化するにすぎないため、処分未了でも詐害行為取消権の被保全債権となり得る。
問題の所在(論点)
詐害行為取消権(民法424条)の被保全債権として、課税処分が行われる前の租税債権が認められるか。具体的には、租税債権の発生時期が課税処分時か、あるいは課税要件事実の充足時かが問題となる。
規範
租税債権は、法律の規定する課税要件事実の存在によって当然に発生するものであり、国がなす課税処分は単にその税額を具体的に明確にするものにすぎない。したがって、詐害行為が行われた時点で課税処分が未だ行われていなくても、租税債権発生の基礎となる期間が終了していれば、当該債権は既に発生しているものと解される。
重要事実
債務者である株式会社Dは、昭和35年5月25日に解散し、租税債務を除いた営業の全部を上告人に譲渡した。被上告人(国)は、昭和31年度から昭和33年度までの事業年度に係る法人税等について、同年5月31日以降に更正決定や賦課決定を行った。上告人は、営業譲渡当時には課税処分が未了であり、租税債権が発生していないため、詐害行為取消権の対象にならないと主張した。
あてはめ
本件における法人税等の租税債権は、昭和31年4月から昭和34年3月までの各事業年度を対象としている。営業譲渡が行われた昭和35年5月25日の時点では、これらの各事業年度は既に終了しており、課税要件事実が充足されている。したがって、国による具体的な更正決定や賦課決定がなされる前であっても、租税債権自体は法的に発生していたといえる。この既発生の債権を保全するために、債務者の営業譲渡を詐害行為として取り消すことは正当である。
結論
租税債権発生の基礎となる事業年度が終了している以上、課税処分未了でも被保全債権として認められる。よって、本件営業譲渡は詐害行為に該当し、取消請求は認められる。
実務上の射程
被保全債権の成立時期が問題となる詐害行為取消権の事案において、債権が租税である場合に適用される。私法上の債権においても「発生の基礎」があれば足りるとする通説的見解(最判昭35・1・26等)と並び、租税債権特有の成立時期を明確にした判例として答案で引用すべきである。
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