公売手続における見積価格の不当は、そのために公売物件が著しく低価に売却されたような事実の存しないかぎり、公売処分の取消または無効の原因に値しない。
公売手続における見積価格の不当と公売処分の効力
旧国税徴収法(明治30年法律第21号)24条,旧国税徴収法施行規則(明治35年勅令第135号)23条
判旨
公売における見積価格の不当は、それにより公売物件が著しく低価で売却された等の事情がない限り、公売処分の取消・無効事由とはならない。また、一括公売が有利かつ合理的である場合には、超過差押えの疑いがあっても直ちに無効とはされない。
問題の所在(論点)
1. 公売物件の見積価格が時価より低廉であることが、公売処分の取消または無効の原因となるか。 2. 滞納税額を大幅に超える一括公売が、公売処分の無効原因(重大かつ明白な瑕疵)となるか。
規範
公売手続における見積価格の決定・公告の目的は、入札の基準を示し、不当な低価売却を防止して公売の公正を図る点にある。したがって、見積価格が不当であっても、そのために公売物件が著しく低価で売却されたような事実がない限り、公売処分の取消・無効原因とはならない。また、一括公売が宅地・建物の分離による価格低下を防ぐために合理的である場合、一括公売によって徴収額を超過したとしても、直ちに重大かつ明白な瑕疵があるとはいえない。
重要事実
上告会社に対する滞納処分として、税務当局が宅地および建物を一括公売した。上告人は、①見積価格(約298万円)が時価(約470万円)に比して著しく低廉であること、②徴収額(約84万円)に比して差押物件が高額すぎる超過差押えであること、③他にも差し押さえるべき財産があったことを理由に、公売処分の無効を主張して訴えを提起した。
事件番号: 昭和33(オ)738 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法上の公売処分において、見積価額を記載した封書を公売場所に置くべき手続規定に違反があったとしても、その違法は公売処分を当然に無効とする程度の瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:税務署長が行った建物の公売処分において、見積価額が69万9000円と査定されていた。しかし、当時の施行規則23条…
あてはめ
1. 本件の見積価格は約298万円であるが、実際の売却価額は約333万円であり、認定時価(約470万円)の7割を超えている。公売における売却価額が比較的低額となる通例に鑑みれば、著しく不当な低価売却とはいえず、見積価格の当否が処分の効力に影響する段階にはない。 2. 宅地と建物を分離して公売すれば建物の価値を著しく低下させる。一括公売により有利な売却を図ることは合理的であり、建物のみの分離公売等で滞納税額を十分に回収できたとする証拠もない以上、一括公売に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
結論
公売物件が著しく低価で売却された事実がない以上、見積価格の不当は公売処分の無効原因とならない。また、本件一括公売に重大かつ明白な瑕疵は認められず、本件公売処分は有効である。
実務上の射程
行政処分の公定力と瑕疵の程度の判断において、見積価格という準備的行為の瑕疵が、最終的な売却価額という結果(実質的権利侵害)を介してのみ処分の効力に影響を及ぼすという構成を示す。実務上、超過差押えの違法を主張する際には、分離公売の可能性や経済的合理性の欠如を具体的に立証する必要があることを示唆する。
事件番号: 昭和29(オ)79 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 破棄差戻
一 国税滞納処分による差押については、民法第一七七条の適用があるものと解すべきである。 二 登記の欠缺を主張する第三者がこれを主張するにつき正当の利益を有しない場合とは、当該第三者に、不動産登記法第四条第五条により登記の欠缺を主張することの許されない事由がある場合、その他これに類するような、登記の欠缺を主張することが信…
事件番号: 昭和40(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
滞納者の所有財産に対する滞納処分が、その滞納者の滞納税金のみならず、誤つて他の者の滞納税金をも徴収するために行なわれた場合には、右処分の瑕疵は、他の滞納者の滞納税金に対するものとしてなされた部分についてのみ存し、その滞納処分全体を違法ならしめるものではない。
事件番号: 昭和29(オ)122 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】国税滞納処分による差押えにおいても民法177条の適用があり、国が「第三者」に該当しないというためには、単に滞納処分の過程で事情を知っていただけでは足りず、納税者の信頼を強く裏切るような「特段の事情」が必要である。 第1 事案の概要:国(上告人)が滞納処分として不動産を差し押さえた際、当該不動産は登…
事件番号: 昭和41(オ)975 / 裁判年月日: 昭和43年10月18日 / 結論: 破棄差戻
譲渡担保が暴利行為により公序良俗に違反するかどうかの判断に当つては、特段の事情のないかぎり、その契約により担保される債権の額とその譲渡担保の対象となつた全物件の価格を比較すべきである。