期日変更申請書に添付された医師の診断書に「狭心症により入院加療中につき出席不能」と記載されていても、その診断書が当該期日より七ケ月以上前に作成されたものであるときは、右期日変更申請を却下しても違法ではない。
病気による出頭不能を理由とする期日変更申請の不許可を違法でないとした事例
民訴法152条
判旨
当事者が病気による出頭不能を理由に期日変更を申し立てた場合であっても、その障害が第一審当時から継続しており、かつ代理人選任や書面提出により防御が可能であれば、申立を却下して判決をしても違法ではない。
問題の所在(論点)
当事者が病気による出頭不能を理由に期日変更の申立てを行った際、裁判所がこれを却下して当事者不在のまま結審し判決を下すことが、防御権の侵害として違法となるか(民事訴訟法上の期日変更の許否と裁量の限界)。
規範
訴訟が解消の見通しなく遅延することは許されない。当事者に病気等の出頭を妨げる障害がある場合でも、代理人の選任や準備書面の提出といった代替手段によって防御権を行使することが可能であれば、期日変更の申立を却下して弁論を終結し、判決を言い渡したとしても防御権の不当な制限にはあたらず、適法である。
重要事実
上告人(控訴人)は、原審(控訴審)の第1回口頭弁論期日前に、狭心症による入院・安静加療を理由とする診断書を添付して期日変更を申し立てた。しかし、原審はこれを容れず、上告人不出頭のまま弁論を終結し、控訴棄却の判決を言い渡した。なお、提出された診断書によれば、当該病気による出頭不能の状態は第一審の第1回口頭弁論期日よりもはるか以前(約7ヶ月前)から生じていたものであった。
あてはめ
上告人が主張する病気(狭心症)による出頭不能の障害は、第一審の当初から継続して生じていたものである。このように長期にわたる障害がある場合、期日変更を認め続ければ訴訟が際限なく遅延することになる。上告人は、自ら出頭できずとも、代理人を選任することや、準備書面を提出して主張を明らかにすることにより防御を尽くすことが可能であった。したがって、原審が期日変更を認めずに手続を進めたことは、上告人の防御権を不当に制限したものとはいえない。
結論
期日変更申立の却下および不出頭のままの判決言渡しは適法であり、原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
裁判所の期日変更に関する広範な裁量を認めた事例である。特に「障害が長期にわたる場合」や「代替手段(代理人・書面)がある場合」には、訴訟遅延防止の要請が防御権の保障を上回ると判断される傾向にある。答案上は、手続的正義の観点から期日変更の要否を論じる際の限界事例として引用できる。
事件番号: 昭和36(オ)923 / 裁判年月日: 昭和37年6月22日 / 結論: 棄却
控訴審第1回口頭弁論期日変更申請にあたつて提出された診断書に「肋間神経痛のため右胸痛著しく、向後当分安静加療を要するものと認める」旨の記載があるにとどまり、右期日に出頭できない程度の状態かどうかの判定資料のない場合に、右期日変更申請を却下し、即日弁論を終結した点に違法はない。