病気で出頭できないことを理由として一審以来一度も口頭弁論期日に出頭しなかつた一方の当事者が、同一の理由で期日の変更を申請したのに対し、裁判所がこれを容れずその不出頭のまま弁論を終結しても違法ではない。
病気による出頭不能を理由とする期日変更申請の不許可が違法ではない場合
民訴法152条
判旨
当事者が病気等の不定期の障害により期日に出頭できない場合であっても、代理人の選任や準備書面の提出等の防御措置を講じる余裕があるときは、裁判所が期日変更を許さずに弁論を終結し判決を言い渡しても、防御権の侵害には当たらず適法である。
問題の所在(論点)
当事者が病気という「顕著な事由」を疎明して期日変更を申し立てた場合に、裁判所がこれを却下して弁論を終結し、判決を言い渡すことは、当事者の防御権を不当に制限し、民事訴訟法上の期日変更に関する規定に違反するか。
規範
口頭弁論期日の変更(民事訴訟法93条3項)を許すか否かは裁判所の合理的な裁量に属する。特に、当事者に出頭不能な不定期の障害がある場合において、訴訟の不当な遅延を回避する必要があり、かつ、代理人の選任や準備書面の提出等により防御の機会が確保されていると認められるときは、期日変更を認めずに弁論を終結しても違法ではない。
重要事実
上告人は、第一審から一度も口頭弁論に出頭せず、代理人も選任していなかった。控訴審の最終口頭弁論期日においても、上告人は病気を理由として医師の診断書を添えて期日変更を申請したが、原審はこれを認めず弁論を終結し、上告人敗訴の判決を言い渡した。なお、上告人は第一審以来、病気を理由に終始欠席を続けていた。
あてはめ
上告人は第一審以来、病気を理由に長期間出頭しておらず、障害の存続期間が不明な不定期の障害があるといえる。この場合、期日変更を認め続けることは訴訟の目通しのない遅延を招く。また、上告人はその間、代理人を選任したり準備書面を提出して主張を明らかにしたりする等の防御措置を講じることが可能であったにもかかわらず、これを怠った。したがって、期日変更を許さなかったことが上告人の防御権を不当に制限したとは評価できない。
結論
原審が期日変更申請を却下し、弁論を終結して判決を言い渡した措置に違法はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所の期日指定権・変更権の裁量を認めた重要判例である。実務上、病気等の正当事由がある場合でも、訴訟遅延の防止(訴訟経済)と防御機会の付与(適正手続)の比較衡量が必要となる。特に「代替手段(代理人や書面)」の有無が裁量濫用の判断において決定的な考慮要素となることを示している。
事件番号: 昭和49(オ)787 / 裁判年月日: 昭和50年7月21日 / 結論: 棄却
準備手続を経ない口頭弁論期日(第一回期日を除く。)の変更は、当事者の合意がある場合でも、顕著な事由の存在が明らかでないかぎり、これを許さなければならないものではない。