選定当事者は、選定者から特別の委任を受けないでも、訴訟上の和解をすることができ、その権限は、選定行為においてもこれを制限することができないものと解すべきである。
選定当事者の和解の権限
民訴法47条1項,民訴法81条2項
判旨
選定当事者は、訴訟上の和解を含む一切の訴訟行為を特別の委任なしに行うことができ、選定行為においてその権限を制限することはできない。したがって、和解を禁ずる旨の制限を付した選定がなされたとしても、その制限部分は無効であり、選定当事者が行った和解の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
選定当事者が訴訟上の和解を行うにあたり、選定者からの特別の委任が必要か。また、選定行為によって和解権限を制限することができるか。
規範
選定当事者(民訴法30条)は、訴訟代理人ではなく自ら当事者となる者である。したがって、訴訟代理人の特別委任事項を定める民訴法55条2項(旧81条2項)の適用を受けず、和解を含む一切の訴訟行為を特別の委任なしに行うことができる。また、選定行為においてこの権限を制限することはできず、権限制限の留保を付した選定がなされた場合、その制限部分は無効であり、無制限の選定としての効力を生ずる。
重要事実
選定者Dによって当事者に選定された上告人らが、訴訟上の和解を行った。これに対し、選定者Dから和解の権限を与えられていなかったこと、あるいは和解を禁ずる旨の権限制限が付されていたことを理由に、本件和解は無効であると主張して争われた事案である。
事件番号: 昭和37(オ)393 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 棄却
売主所有の土地について指定された換地予定地の一部を目的物として売買契約が成立した場合において、その契約の成立にいたるまでの経緯および右目的物に関し原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、同契約に基づき買主の取得する当該土地所有権移転請求権については、いわゆる選択債権に関する民法の規定を類推適用すべきであ…
あてはめ
選定当事者は法的に独立した当事者の地位を有するため、その訴訟遂行権は包括的かつ不可分である。本件において、上告人らが選定者Dから和解の権限を特に授与されておらず、むしろ権限を与えない旨の留保があったとしても、和解をすることは当然に選定当事者の権限に属する。かかる制限は、選定者に対する受任義務違反の問題を生じさせ得るにすぎず、対外的な訴訟行為としての和解の効力を左右するものではない。
結論
選定当事者が行った本件和解は有効である。選定行為に付された和解権限の制限は無効であり、上告人らは適法に和解を行う権限を有していたといえる。
実務上の射程
選定当事者の権限の包括性を明示した重要判例である。答案上は、選定当事者による和解の効力が争われる場面で、訴訟代理人との対比(55条2項の不適用)を強調し、訴訟手続の明確性と安定性の観点から権限制限を認めない論拠として用いる。和解以外の取下げや放棄についても同様の理が妥当する。
事件番号: 昭和28(オ)843 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、その所有権の公示に協力すべき義務を有するものであるから、真正の所有者は、所有権に基き所有者名義人に対し、所有権移転登記の請求を為し得るものと解すのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)293 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】破産管財人が登記名義の移転を求める契約に基づき請求する場合、その結果が否認権行使と同様であっても、それは契約の効果であって否認権の行使とは無関係である。また、表意者が意思と表示の不一致を自覚している場合は錯誤にあたらず、動機の錯誤が法律行為の内容として表示されない限り無効を主張できない。 第1 事…
事件番号: 昭和38(オ)960 / 裁判年月日: 昭和41年2月17日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人が上告取下および復代理人選任の特別授権を受けている場合、当該代理人から適法に復任された復代理人が行う上告取下げは、本人が直接復代理人に授権していなくとも有効である。 第1 事案の概要:上告人らは弁護士Eに対し、上告取下げおよび復代理人選任の特別授権を含む訴訟委任をしていた。Eは、相手方と…