期限の定めのない債務のための不動産の譲渡担保においては、債務者が債権者に対し債務を弁済して担保物の返還を受けうる期間について、民法第五八〇条の適用はない。
譲渡担保と買戻期間
民法580条
判旨
譲渡担保において債務者が弁済して担保物の返還を受け得る期間については、買戻期間に関する民法所定の制限(580条等)は適用されない。
問題の所在(論点)
債権を存続させる譲渡担保において、債務者が債務を弁済して担保物件を取り戻すことができる期間に対し、民法580条(買戻しの期間)の制限が適用または準用されるか。
規範
債権を存続させつつ、その担保の目的で所有権を移転する譲渡担保(いわゆる担保的構成)においては、債務者が弁済により担保物の返還を受け得る期間について、買戻特約に関する民法580条等の期間制限は及ばない。
重要事実
被上告人(債務者)は、上告人(債権者)に対する貸金等の債権を担保するため、本件土地の所有権を上告人へ移転した。この際「返り証」が作成されており、形式上は買戻約款付売買のような外形を呈していたが、実質は債権を存続させたまま担保の目的で所有権を移転させるものであった。上告人は、民法所定の買戻期間(最長10年)の制限を主張し、被上告人による担保物の返還請求を拒もうとした。
あてはめ
本件における所有権移転は、債権を消滅させる代物弁済予約や純粋な買戻約款付売買ではなく、債権を存続させたままなされた担保目的の移転(譲渡担保)である。譲渡担保は、実質的には抵当権等と同様の担保権としての性質を有するものであり、債権が存続する以上、その清算が終了するまでは弁済による受け戻しを認めるべきである。したがって、不動産売買の解除権としての性格を持つ買戻期間の制限を、担保的性質を有する譲渡担保にそのまま適用することは妥当ではない。
結論
譲渡担保における担保物の返還請求期間に民法580条の制限は適用されない。よって、期間経過を理由とする上告人の主張は採用されず、受戻しが可能である。
実務上の射程
譲渡担保と買戻しの区別を明確にした上で、譲渡担保であれば10年を超える期間設定や、期間の定めがない場合の受戻しが可能であることを示す。答案では、契約が「売買(買戻し)」か「譲渡担保」かの認定を行った後、期間制限の成否を論ずる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和28(オ)324 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法580条2項に基づき、買戻しの期間を定めた場合には、後日合意によってこれを伸長することはできない。 第1 事案の概要:上告人は、買戻しの期間を定めた契約について、その後に当事者間の合意によって期間を伸長したと主張し、当該伸長後の期間内における買戻しの有効性を争った。これに対し、原審は買戻期間の…
事件番号: 昭和27(オ)580 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占有による損害賠償を請求する場合において、その損害額の算定は原則として賃料相当額によるべきであるが、その算定の基準となる時期は不法占有の全期間にわたるべきである。 第1 事案の概要:上告人が他人の土地を権原なく占有(不法占有)したことに対し、被上告人が不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である…
事件番号: 昭和37(オ)1410 / 裁判年月日: 昭和39年2月13日 / 結論: 棄却
所有権転移仮登記の権利者が、仮登記後所有権取得登記を経た第三者に対し、右登記の抹消登記手続を請求した場合、裁判所が、仮登記に基づく本登記手続につき承諾を命ずる判決をしても、民訴法第一八六条に違反しない。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。