労働組合の推薦する特定候補以外の立候補者を支持する組合員の政治活動(選挙運動)を一般的・包括的に制限禁止し、これに違反する行動を行なつた組合員は統制違反として処分されるべき旨を決議した組合大会決議は、労働組合の統制権の限界を超えるものとして無効である。(福岡高裁昭和三九年(ネ)第三二八号同四〇年四月二二日判決、高民集一八巻三号二〇四頁参照)
労働組合の統制権の限界 ――特定候補以外の者のためにする組合員の政治活動の自由との関係について――
憲法28条,憲法14条,憲法19条,憲法21条
判旨
労働組合が統一候補以外の者を支持する組合員の政治活動を一般的・包括的に禁止し、これに違反した者を処分する旨の決議は、組合員の立候補や政治活動の自由を侵害するものとして、統制権の限界を超え無効である。
問題の所在(論点)
労働組合が決定した選挙方針に反し、非推薦候補を支援する組合員の政治活動を禁止し、違反者に制裁を科す旨の決議が、組合の統制権の正当な行使として有効か。組合員の政治活動の自由と統制権の限界が問われた。
規範
労働組合は、憲法28条の団結権保障の効果として、目的達成に必要かつ合理的な範囲内で組合員への統制権を有する。しかし、公職選挙への立候補や政治活動の自由は憲法15条1項等により保障された重要な基本的人権である。組合が統一候補を決定した場合でも、非推薦候補としての立候補断念の勧告・説得を超える強制や、特定候補以外の支持を一般的・包括的に禁止し処分することは、統制権の限界を超える。
重要事実
労働組合である上告人が大会において、組合の推薦する特定候補(統一候補)以外の立候補者を支持する組合員の政治活動(選挙運動)を一般的・包括的に制限・禁止し、これに違反した組合員を統制違反として処分する旨の決議を行った。被上告人はこの決議の効力を争った。
事件番号: 昭和39(オ)1264 / 裁判年月日: 昭和40年4月30日 / 結論: 棄却
漁業協同組合の定款に漁業法第八条による組合員の漁業権行使に関する定めがないときでも、組合の割当区域外で漁業を行なつた組合員を組合の事業を妨げる行為および組合の信用を失わせる行為をなしたものとして除名することは差し支えない。
あてはめ
本件決議は、組合が推薦する特定候補以外の者を支持する一切の政治活動を一般的・包括的に禁止し、違反者を処分の対象とするものである。これは、組合員が自らの政治的信条に基づき特定の候補者を応援する自由を全面的に否定するに等しい。立候補の自由の制限に関する先行判例の理は、立候補した者のためにする組合員の政治活動の自由にも妥当するため、勧告や説得の域を超えた本件処分方針は合理的な範囲を逸脱している。
結論
本件決議は、労働組合の統制権の限界を超えるものとして無効である。
実務上の射程
三井美唄労組事件(立候補の自由)の法理を、支援者側の政治活動の自由にも拡張した重要判例である。答案上は、組合員の協力義務が肯定される「経済的利益に直接関係する活動(選挙協力費の徴収等)」と、強制が否定される「政治的意思決定そのもの(投票先や運動の自由)」を区別する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和42(行ツ)23 / 裁判年月日: 昭和42年7月20日 / 結論: 棄却
土地改良区の総代選挙において、立候補届出が受理された後に、当該候補者に被選挙権がないことが判明したとして、選挙の当日投票所に掲げた候補者氏名の掲示中に同人の氏名を表示しないで選挙を執行したことは、違法であり、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれの認められるかぎり、右選挙は無効である。
事件番号: 昭和24(オ)79 / 裁判年月日: 昭和25年7月6日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】内閣総理大臣による公職追放覚書該当者の指定行為の無効確認を求める訴えは、日本の裁判所の裁判権に属さない事項であり、不適法な訴えとして却下されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年4月の参議院議員選挙に立候補し当選したが、同年5月に内閣総理大臣から公職追放覚書該当者として指定を受けた…
事件番号: 昭和47(オ)17 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
水産業協同組合法による協同組合の総会の議決が当然に無効である場合においては、同法一二五条所定の行政庁に対する取消の手続を経ることなしに、各組合員は、直接裁判所に対し、その無効を前提として権利関係の確認を求めうるものと解すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)1143 / 裁判年月日: 昭和44年2月28日 / 結論: 棄却
農業協同組合法四二条の二の規定は、単に同条所定の役職員に対し競業避止義務を課したにとどまり、その就任資格を制限した規定ではない。