養子縁組事件においても、当事者が自白すれば、裁判所は、自由心証によつて真実であるかどうかを判断し、真実と認めれば、これを事実認定の資料とすることを妨げられるものではない。
人事訴訟における自白の効果
人事訴訟手続法10条,人事訴訟手続法26条
判旨
養子縁組の無効を争う人事訴訟において、裁判上の自白に関する法則は適用されないが、裁判所が自由心証により自白内容を真実と認めた場合には、これを事実認定の資料とすることができる。
問題の所在(論点)
養子縁組の無効を求める人事訴訟において、裁判上の自白の法則が排除される結果として、裁判所は当事者の自白を一切事実認定の資料として用いることができないか。
規範
人事訴訟(養子縁組事件等)においては、公益的見地から真実発見が重視されるため、民事訴訟法上の裁判上の自白に関する法則(不要証効・拘束力)は適用されない。しかし、裁判所は当事者の自白を直ちに排斥すべきものではなく、自由心証によって当該自白の内容が真実であると判断した場合には、これを証拠原因の一つとして事実認定の資料に用いることができる。
重要事実
上告人両名が、Dの印鑑を冒用して本人の意思に基づかずに養子縁組届出を行ったとして、被上告人が養子縁組の無効を主張した事案である。原審は、当事者による一定の自白(事実に反しない旨の陳述等)を事実認定の資料として採用し、届出が無効であると判断した。これに対し上告人が、人事訴訟において自白を根拠に事実認定を行うことは違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和30(オ)852 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判示事実の認定において、一部の証拠の採用に違法がある場合であっても、他の証拠によって当該認定が維持できるのであれば、その違法は判決に影響を及ぼすべきものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が事実認定の根拠とした乙第2号証および乙第3号証について、その採用に違法がある旨を主張して上告…
あてはめ
養子縁組事件に裁判上の自白の法則が適用されず、裁判所が自白に拘束されることなく真実を発見すべきであることは正当である。もっとも、本件において原審が自白を資料としたのは、弁論の全趣旨や証拠調べの結果に基づき、自由心証によって当該自白内容を真実と認めたからであると解される。したがって、自白を単なる不要証事実として扱うのではなく、真実性の判断を経た上で証拠資料とすることは、真実発見の要請に反するものではない。
結論
裁判所は、人事訴訟においても自白を自由心証により真実と認めた場合には、これを事実認定の資料とすることができる。したがって、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
人事訴訟における「自白」の証拠力の問題として整理される。現在の人事訴訟法19条1項(自白の拘束力排除)下においても、本判例の趣旨は維持されている。答案上は、弁論主義の修正がなされる場面(公益的・身分法的訴訟)において、自白が「拘束力」は持たないが「証拠資料」にはなり得ることを説明する際に活用すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和43年3月15日 / 結論: 棄却
養子縁組無効確認請求事件において、偽造の縁組届に基づき不実の記載がされた戸籍簿に一致する戸籍謄本が証拠として提出されていた場合でも、判決が縁組の効力を判断するにあたつて、右戸籍謄本を認定に用いていないときには、右不実の記載がされた事実は、右判決に対する再審事由とはならない。
事件番号: 昭和28(オ)159 / 裁判年月日: 昭和30年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文には具体的な判旨の記載がないが、原審が認定した事実を基礎とした法律判断を正当として上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:上告人が原審の認定した事実および法律判断を不服として上告を申し立てた事案。なお、具体的な権利関係や紛争の内容については判決文からは不明である。 第2 問題の所在(論…
事件番号: 昭和23(オ)85 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないと…