鑑定の結果血液型の不一致が明らかになつたため、被疑者が犯人であることが極めて疑わしいものとなつた等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとでは、勾留を継続すべき相当な理由は消滅したものといわなければならず、その後の釈放遅延による被疑者の精神的苦痛に対して、国は担当検察官の過失による国家賠償法第一条に基づく責任を負わなければならない。
検察官の過失に基づく違法な勾留継続による精神的苦痛に対して国家賠償法第一条の責任があるとされた事例
刑訴法207条,刑訴法208条1項,刑訴法60条,国家賠償法1条
判旨
勾留期間の延長が必要でないにもかかわらず、漫然と勾留を継続することは、刑事訴訟法208条1項に反し違法となり、これにつき検察官に過失がある場合は国家賠償法上の責任を負う。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法208条に基づく勾留において、期間満了前であっても捜査の必要性が消滅した場合に勾留を継続する行為が、国家賠償法上の違法を構成するか。また、その際の検察官の過失の有無が問われた。
規範
刑事訴訟法208条1項の趣旨に照らし、勾留の継続が必要であると認められるべき事情が消失した場合には、速やかに被疑者を釈放すべき義務がある。この義務に反し、捜査上の必要がないにもかかわらず漫然と勾留を継続する行為は違法であり、当該不作為について検察官に過失が認められるときは、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が発生する。
重要事実
被上告人に対する本件勾留について、勾留期間の少なくとも最後の5、6日間については、もはや留置を継続する必要性が失われていた。しかし、検察官は適切な措置を講じることなく、漫然と勾留を継続した。この点について、原審は検察官に過失があったと認定した。
あてはめ
本件では、勾留の最後の5、6日間において、すでに身柄を拘束して捜査を継続すべき合理的な理由が認められない状態にあったといえる。それにもかかわらず釈放等の措置を執らなかったことは、刑事訴訟法208条1項の解釈上、違法な留置に該当する。また、客観的に必要性のない勾留を継続させた点について、検察官としての注意義務を怠った過失が認められるとした原審の判断は相当である。
結論
本件勾留のうち最後の5、6日間については、刑事訴訟法208条1項に反し違法であり、検察官の過失も認められるため、国は損害賠償責任を負う。
実務上の射程
身柄拘束事案において、形式的な勾留期間内であっても、実質的な捜査の必要性が消滅した場合には、釈放義務が生じることを示す射程を持つ。答案上は、国家賠償請求の違法性評価において、刑事訴訟法の規定を実質的に解釈する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)77 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察官が、被疑者の無実を示唆する重要な証拠資料を検察官への送付記録に添付しなかったことは、国家賠償法上の過失にあたり、これにより検察官の検討が遅れ釈放が遅延した場合には、当該不作為と釈放遅延との間に因果関係が認められる。 第1 事案の概要:東京都の担当警察官は、検察官への送付記録に「診察所見」と題…