新聞社の取材記者が、掲載記事を捜査担当官から取材したと認められる等、原判示の事実関係のもとにおいては、新聞社の被用者に過失はないと認めるのが相当である。
新聞社の取材記者に過失がないとされた事例
民法709条,民法710条,民法715条
判旨
名誉毀損における真実相当性の判断に関し、新聞記者が公的な捜査担当官から取材して記事を作成した場合には、特段の事情がない限り、被用者に過失は存しない。
問題の所在(論点)
新聞記事の内容について、記者が捜査担当官から直接取材して執筆した場合、当該記事が真実でないとしても、被用者(記者)に過失がないといえるか(真実相当性の有無)。
規範
不法行為法(民法709条、715条)上の名誉毀損における過失の存否については、適示した事実を真実と信ずるに足りる相当な理由(真実相当性)がある場合には、不法行為は成立しない。公的な捜査担当官からの取材に基づき記事を作成した事実は、この相当性を基礎付ける重要な要素となる。
重要事実
上告人が被上告会社(新聞社等)による記事掲載により名誉を毀損されたとして損害賠償を求めた事案。被上告会社の取材記者は、本件記事の内容を公的な捜査担当官から直接取材して執筆していた。上告人は、被用者(記者)に過失があると主張して争った。
あてはめ
被上告会社の記者は、本件記事の内容を捜査担当官という信頼性の高い公的情報源から取材して得ている。このような取材過程を経ている場合、一般に記者がその内容を真実であると信じたことには合理的な根拠がある。原審が認定した事実関係のもとでは、記者が捜査担当官から取材した事実に照らし、特段の過失を認めるべき事情はないと判断される。
結論
被上告会社の被用者に過失は存しない。したがって、被上告会社の使用者責任も成立せず、上告人の請求は排斥される。
実務上の射程
本判決は、報道機関の取材源が公的な捜査機関等である場合の真実相当性の判断基準を示したものである。答案上は、名誉毀損の過失(真実相当性)を論じる際、取材源の信頼性が相当性を支える核心的要素となることを示す論拠として活用できる。ただし、あくまで「捜査担当官からの取材」という事実認定が前提となる点に留意が必要である。
事件番号: 平成15(受)900 / 裁判年月日: 平成17年6月16日 / 結論: 破棄自判
血液学者で加熱血液製剤の治験統括医であった甲が血液製剤市場の最大手で加熱血液製剤の開発が遅れていた製薬会社に合わせて加熱血液製剤の治験を遅らせ,その結果,我が国における加熱血液製剤の製造承認が米国より2年4か月遅れた事実,治験の時期に甲が製薬会社各社から資金提供を受けていた事実等が,乙の執筆した雑誌記事等において摘示さ…
事件番号: 昭和28(オ)406 / 裁判年月日: 昭和30年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づき、捜査機関への誤った犯人申告によって被申告者が勾留され、新聞記事で名誉を毀損された場合、その間に警察官や検察官の判断、新聞記者の取材行為等が介在したとしても、相当因果関係は否定されない。 第1 事案の概要:上告人は、確たる証拠がないにもかかわらず、漠然とした記憶に基づいて軽々しく被…