共同不法行為者に対する共同訴訟は必要的共同訴訟ではない。
共同不法行為者に対する共同訴訟は必要的共同訴訟か
民訴法62条,民法719条
判旨
民法719条所定の共同不法行為者に対する損害賠償請求訴訟は通常の共同訴訟であり、類似必要的共同訴訟には当たらない。
問題の所在(論点)
共同不法行為者を共同被告とする損害賠償請求訴訟は、類似必要的共同訴訟(合一確定が必要な訴訟)に該当し、一部の被告に対する訴えの取下げが制限されるか。
規範
民法719条に基づく共同不法行為者に対する損害賠償請求訴訟は、各加害者が連帯債務(不真正連帯債務)を負う関係にある。そのため、共同被告として提起された場合であっても、各被告に対する請求はそれぞれ独立したものであり、類似必要的共同訴訟ではなく通常の共同訴訟として扱われる。
重要事実
被上告人(原告)は、自己が所有する立木の所有権を不法に侵害されたとして、上告人らおよび訴外Dに対し、共同不法行為に基づき損害賠償を請求した。第一審において、被上告人は共同被告の一人であるDに対する訴えを取り下げたが、他の被告(上告人ら)は、Dに対する訴えの取下げは無効であり、Dに対する責任も併せて判断すべきであると主張して争った。
あてはめ
共同不法行為による損害賠償債務は不真正連帯債務であり、債権者は各加害者に対して個別に、または全員に対して同時に全額の請求をなすことができる。訴訟法上も、各加害者に対する請求は別個の債権に基づくものであり、判決内容が論理的に一致することを法律上強制される関係(必要的共同訴訟)にはない。したがって、共同被告の一人に対する訴えを取り下げることは有効であり、裁判所は残りの被告との関係でのみ不法行為の成否を判断すれば足りる。
結論
共同不法行為者に対する損害賠償請求訴訟は通常の共同訴訟である。したがって、一部の被告に対する訴えの取下げは有効であり、裁判所が取下げに係る被告の責任について判断しなかったことに違法はない。
実務上の射程
共同不法行為の訴訟形態を「通常共同訴訟」と明示したリーディングケースである。実務上、被告間での弁論の分離や一部判決、一部の被告に対する取下げや和解が自由に行える根拠となる。答案上は、不真正連帯債務の性質から共同訴訟の形態を論じ、民事訴訟法第39条(通常共同訴訟)の適用を導く際に使用する。
事件番号: 昭和30(オ)870 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 棄却
民法第七一九条第一項前段の共同不法行為が成立するためには、不法行為者間に意思の共通(共謀)もしくは「共同の認識」のあることは必要でなく、単に客観的に権利侵害が共同でなされれば足りる。