民法第五四五条第二項の利息債務は、実質は不当利得返還の法理より生ずるもので、同法第五四六条第五三三条所定の同時履行の抗弁権にかかわりなく発生し、ただその債務の履行が右抗弁権の作用をこうむるにすぎないと解すべきである。
民法第五四五条第二項の利息債務の発生と同法第五四六条第五三三条の同時履行の抗弁権の関係
民法545条,民法546条,民法533条,民法415条,民法419条,民法703条
判旨
契約解除による原状回復義務として返還すべき金銭に付される利息は、不当利得返還の法理に基づく法定利息であり、同時履行の抗弁権の存在にかかわらず受領時から発生する。
問題の所在(論点)
契約解除に伴う金銭返還義務において、返還義務者が同時履行の抗弁権を有する場合でも、民法545条2項に基づく「受領の時からの利息」が発生するか。同時履行の抗弁権と原状回復における利息発生の関係が問題となる。
規範
民法545条2項の利息は、契約解除に基づく原状回復のために返還すべき金銭に付すべき法定利息であり、不当利得返還の法理を基礎とする。これは履行遅滞により発生する遅延損害金とは性質を異にするため、同法546条・533条所定の同時履行の抗弁権の存在によって発生が妨げられるものではなく、受領の時から当然に発生する。
重要事実
上告人と被上告人との間で土地の売買契約が締結されたが、後に当該契約が解除された。原状回復として上告人は受領済みの売買代金を返還する義務を負い、被上告人は土地の所有権移転登記の抹消手続を行う義務を負った。上告人は、同時履行の抗弁権を行使できる範囲内では、代金返還に伴う利息(民法545条2項)は発生しないと主張した。
事件番号: 昭和29(オ)902 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
一 合意解除の場合は、民法第五四五条による原状回復義務は生じない。 二 原告(買主)が、被告(売主)の債務不履行を理由として売買契約の法定解除を主張し、民法第五四五条により、前渡代金の返還を請求している事案において、右法定解除が認められなかつた場合は、たとえ原告の否認する合意解除の事実が認められても、当該訴訟においては…
あてはめ
民法545条2項の利息は「受領の時より」付す必要があると規定されている。これは、契約の解消により保持する根拠を失った利益を返還させるという不当利得返還の性格を有するものであり、債務不履行を要件とする遅延損害金ではない。したがって、反対給付との同時履行の関係にあることは、利息債務の履行を拒める(抗弁権の作用を受ける)理由にはなっても、利息債権自体の発生を阻止する理由にはならない。ゆえに、抹消登記手続との引換え給付であっても、受領時からの法定利息を付すべきである。
結論
同時履行の抗弁権が認められる場合であっても、民法545条2項の利息は発生する。上告人は売買代金に法定利息を付して支払う義務を負う。
実務上の射程
契約解除の事案において、代金返還と目的物返還(または登記抹消)が同時履行の関係にある場合でも、利息(年3%・民法404条2項)を受領時から計上することを忘れないようにする。遅延損害金(履行遅滞)と不当利得的利息を混同しないことが答案上のポイントとなる。
事件番号: 昭和34(オ)345 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】双務契約を合意解約した際の原状回復義務は、原則として同時履行の関係に立つが、当事者間にそれを否定する趣旨の特約が認められる場合には、引換給付を要しない。 第1 事案の概要:漁網の売買契約において、買主Dと売主(被上告人)が当該契約を合意解約した。その際、買主Dが受領済みの代金のうち199万8000…