上告人申出の証人を採用しなかつたことは、唯一証拠排斥の場合ではなく、且つ、原審が証拠調の必要限度を合理的に裁量した結果と認められる。
離婚事件における証拠調の限度
民訴法259条,人訴法14条
判旨
裁判所は、証拠調べの必要限度を合理的に裁量することができ、一審の審理結果や本人尋問等の証拠に基づき婚姻関係の破綻を否定した判断に違法はない。民法770条1項5号の事由は、諸般の証拠関係から客観的に判断されるべきものである。
問題の所在(論点)
民法770条1項5号の離婚事由の存否を判断するにあたり、裁判所が申出のある証人を取り調べずに判断を下すことは、証拠調べの必要限度に関する裁量の範囲を逸脱し、審理不尽の違法を構成するか。
規範
「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の存否については、当事者の主張のみならず、提出された書証や本人尋問の結果等の諸般の証拠に基づき、裁判所が証拠調べの必要限度を合理的に裁量して判断する。必ずしも申出のあった全ての証人を取り調べる必要はなく、既存の証拠によって事実関係が十分認定可能であれば、その裁量の範囲内において審理を尽くしたものと認められる。
重要事実
上告人は、被上告人との間に「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を求めた。一審および原審において、裁判所は乙第1号証(書証)や当事者本人尋問などの証拠調べを実施した。上告人は、夫婦間の不和の原因を立証するために特定の証人の尋問を申し立てたが、原審は当該証人の取調べを行わずに、婚姻関係が破綻しているとは認められないとして上告人の請求を退けた。これに対し上告人が、証拠調べを尽くしていない等の違法を主張して上告した事案である。
あてはめ
本件において、原審は上告人が申し出た証人を「唯一の証拠」とは当たらないと判断し、取り調べなかった。しかし、原審は一審の審理結果、提出された各書証、および上告人・被上告人双方の本人尋問の結果を総合的に検討している。これらの証拠関係に照らせば、夫婦間の不和の原因や婚姻関係の状態を認定するに足りる材料は揃っており、証拠調べの必要限度を合理的に裁量した結果といえる。したがって、これら既存の証拠に基づき「未だ婚姻を継続し難い重大な事由があるとは認められない」と判断した過程に、論理の飛躍や裁量権の逸脱は認められない。
結論
本件において婚姻を継続し難い重大な事由があるとは認められず、原審の判断に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
離婚原因(770条1項5号)の認定における事実認定の手法と、民事訴訟法上の証拠採否に関する裁判所の裁量権を確認した事例。実務上は、特定の証人尋問が却下されたとしても、他の証拠(本人尋問や書証)で実質的な審理が尽くされていれば、審理不尽の違法とはならないことを示唆する。答案上は、破綻の有無を判断する際の裁判所の広範な裁量を裏付ける文脈で使用し得る。
事件番号: 昭和39(オ)558 / 裁判年月日: 昭和40年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」の存否については、婚姻成立の経緯や共同生活の実態、子の福祉に加え、当事者の反省・努力や周囲の協力による関係回復の可能性を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の婚姻関係について、上告人は婚姻当初から意思の合致が欠けてい…