民訴法第三二三条により真正な公文書と推定されたからといつて、当該文書の記載内容の真実であることにまで法律上の推定が働くものではない。
民訴法第三二三条の法意
民訴法323条
判旨
文書の成立の真正を認めたことは直ちにその内容の真実性を認めたことにはならず、印鑑証明書の印影の真正が争われた場合は、その真正を主張する者が立証責任を負う。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の文書の成立の真正が認められた場合、その内容の真実性(実質的証拠力)までもが推定されるか。また、成立に争いのない印鑑証明書の印影が名義人の真正な印鑑によるものか否かについて争いがある場合、誰が立証責任を負うか。
規範
1.文書の成立の真正(形式的証拠力)が認められても、当然にその記載内容が真実であること(実質的証拠力)が法律上推定されるわけではない。 2.成立に争いのない印鑑証明書であっても、その印影が名義人の真正な印鑑によるものであることが争われた場合、その真正を主張する者が当該事実を立証する責任を負う。
重要事実
上告人は、被上告人との間で共有土地持分売買契約を締結したと主張し、その証拠として「共有土地持分売渡証書」及び「印鑑証明書」を提出した。被上告人は、印鑑証明書の成立自体は認めたものの、そこに顕出された印影は自己の届出印によるものではなく偽造されたものであると主張した。原審は、当該印影が被上告人の印鑑によるものであると認めるに足りる証拠がないとして、売買契約の成立を否定した。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
あてはめ
本件において、被上告人が印鑑証明書の成立(形式的証拠力)を認めたとしても、その内容が真実であることまで推定されるものではない。上告人は印鑑証明書の印影が被上告人の真正な印鑑によるものであると主張するが、原審においてこれを認めるに足りる証拠がないと判断されている。したがって、当該印影が真正であることを前提とする売渡証書の成立の真正も認められず、無権代理人による契約として被上告人に対する効力は否定される。
結論
上告を棄却する。印鑑証明書の成立を認めても内容の真実性は推定されず、印影の真正について立証がない以上、売渡証書の成立の真正は認められない。
実務上の射程
文書の形式的証拠力と実質的証拠力を峻別する基本判例である。答案上では、民訴法228条4項の二段の推定との関係で、一段目の推定(印影が本人の印章によって顕出されたこと)が争点となる場合の立証責任の所在を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)207 / 裁判年月日: 昭和36年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の申請手続に不備があり本来受理されるべきでない場合であっても、既になされた登記が実体的権利関係に合致する限り、その登記は有効である。 第1 事案の概要:本件山林の所有権に関し、再売買の予約があったと主張する上告人と、被上告人との間で争いが生じた。被上告人は訴外Dとの間で再売買の交渉期間を…
事件番号: 昭和34(オ)246 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。 第1 事案の概要:被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義…
事件番号: 昭和36(オ)535 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
処分禁止仮処分前にされた移転契約でも、仮処分後に登記された場合には、所有権移転をもつて仮処分債権者に対抗しえない。
事件番号: 昭和33(オ)484 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得の要件として、当該不動産が「他人の物」であることを判示する必要はあるが、その所有者が特定の誰であるかまでを確定する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が本件不動産の特定の前所有者についての判定を誤ったと主張し、時効取得の成否を争った。原審は、本件不動産が被上告人(時効取得…