一、(省略) 二、被害者の遺族が支出した葬式費用は、社会通念上特に不相当なものでないかぎり、加害者側の賠償すべき損害となる。 三、被害者の遺族が受領した香典は、損害額の算定にあたり控除すべきものではない。
一、逸失利益の算定上控除すべき生活費の判断に理由齟齬の違法があるとされた事例 二、被害者の遺族が支出した葬式費用は加害者側の賠償すべき損害となるか 三、被害者の遺族が受領した香典を損害額の算定にあたり控除することの要否
民法709条
判旨
交通事故による逸失利益の算定において、将来の生活費が収入を上回る時期の純収益は認められないが、その不足額を他時期の収益から控除する必要はない。また、遺族の葬儀費用や被害者本人の慰謝料請求権の相続を認め、香典については損害賠償額から控除すべきではないとした。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償(民法709条、710条、711条)に関し、①将来の収入不足分を他時期の逸失利益から控除すべきか、②葬儀費用および香典の損益相殺の可否、③被害者本人の慰謝料請求権の相続性の可否が問題となった。
規範
1. 逸失利益:将来の一定期間において生活費が収入を上回る場合、当該期間の純収益は発生しないが、その不足分を他時期の収益から控除すべきではない(生活費は収入を得るための必要経費ではないため)。 2. 葬儀費用:社会通念上相当な範囲であれば、死亡事故による必要的出費として損害に含まれる。香典は損害補填の性質を有しないため、損益相殺の対象とならない。 3. 慰謝料:被害者本人の慰謝料請求権と遺族固有の慰謝料請求権は被害法益が異なるため、両者の併存は二重取りに当たらない。被害者本人の請求権は、相続の対象となる。
重要事実
被害者Dは交通事故により死亡。原審は、事故後10年間は工場給与と内職収入から生活費を控除した額を逸失利益とし、その後の10年間は収入が半減するにもかかわらず、生活費の減少を考慮せずに前期間の半額を純収益として認めた。また、加害者側は、支出された葬儀費用や相続された慰謝料、香典の取扱いについて、賠償額からの控除や不認容を求めて上告した。
事件番号: 昭和37(オ)611 / 裁判年月日: 昭和43年8月2日 / 結論: その他
一、企業主が生命または身体を侵害されたため企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる財産上の損害額は、特段の事情のないかぎり、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定すべきである。 二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合において上告審で口頭弁論が開か…
あてはめ
1. 逸失利益について、事故10年後以降は内職収入のみとなり、生活費を下回るため純収益は認められない。しかし、生活費は「収入を得るための支出」ではないため、後の不足分を前の利益から差し引く論理は成立しない。 2. 葬儀費用は、本件支出額が社会通念上相当であるため肯認される。香典は社交的儀礼であり損害填補ではないから控除しない。 3. 慰謝料について、被害者自身の請求権は発生と同時に当然に相続の対象となり(判例の確定した見解)、遺族固有の請求権と併存しても二重利得とはいえない。
結論
1. 逸失利益のうち、収入が生活費を下回る期間の分を認めた原判決を一部破棄し、当該部分の請求を棄却する。 2. 葬儀費用、香典の非控除、慰謝料請求権の相続については、原判決の判断を維持し上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、逸失利益の算定における「生活費控除」の限界を明確にした判例である。特に、将来的に赤字が見込まれる期間があっても「通算」して損害額を減らす必要がない点は、被害者救済の観点から重要である。また、慰謝料請求権の相続性について、意思表示を不要とする既定路線を再確認している。
事件番号: 昭和47(オ)645 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: その他
不法行為により死亡した国家公務員の給与、国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による退職給付の受給利益喪失による損害賠償債権を相続した者が、右公務員の死亡により遺族に給付される国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による遺族年金、国家公務員災害補償法による遺族補償金の受給権者でな…