一、企業主が生命または身体を侵害されたため企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる財産上の損害額は、特段の事情のないかぎり、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定すべきである。 二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合において上告審で口頭弁論が開かれたときは、該附帯上告は右口頭弁論の終結時までに提起されなければならない。
一、企業主が生命または身体を侵害されたことにより生ずる財産上の損害額の算定基準 二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合とその提起期間
民法709条,民法416条1項,民訴法396条,民訴法374条
判旨
個人事業主が死亡した場合の逸失利益は、特段の事情がない限り、企業収益のうち本人の労務や個人的寄与に基づく収益部分に限定される。企業が存続して収益を上げている場合、従前の収益全額を本人の寄与分と推定することはできず、残存収益を控除して算定すべきである。
問題の所在(論点)
個人事業主が死亡した際、事業が相続人に承継され存続している場合における「得べかりし利益」(逸失利益)の算定方法が問題となる。
規範
不法行為に基づく逸失利益(民法709条)の算定において、企業主が死亡した場合の損害額は、原則として企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきである。企業主の死亡にかかわらず企業が存続し収益を上げているときは、特段の事情のない限り、従前の収益全部が企業主個人の労務等によってのみ取得されていたと推定することはできない。
重要事実
被害者Eは個人事業主であったが、不法行為により死亡した。Eの生存時、昭和27年から31年までの5年間の平均年間収益は97万8044円であった。Eの死亡後、その営業を承継した被上告人らは、昭和33年度に20万8318円の営業収益を上げた。原審は、特段の事情を検討することなく、Eが従前取得していた収益全額(約97万円)を損害算定の基準としたため、加害者側が上告した。
事件番号: 昭和40(オ)330 / 裁判年月日: 昭和43年10月3日 / 結論: その他
一、(省略) 二、被害者の遺族が支出した葬式費用は、社会通念上特に不相当なものでないかぎり、加害者側の賠償すべき損害となる。 三、被害者の遺族が受領した香典は、損害額の算定にあたり控除すべきものではない。
あてはめ
本件では、Eの死亡後も事業が存続しており、昭和33年度には20万8318円の収益が上がっている。この事実は、従前の収益(約97万円)のすべてがE個人の個人的寄与のみに帰属していたわけではないことを示唆する。したがって、算定にあたっては、従前の平均収益から、承継後の収益に相当する額(本件では20万8318円)を差し引いた額をもって、Eの労務等の個人的寄与による収益部分(逸失利益)と推定するのが相当である。原審が収益全額を基礎とした点は、算定の基準に誤りがあるといえる。
結論
事業が存続している場合、特段の事情がない限り、従前の収益全額を損害とすることはできず、個人の寄与分に応じた算定を行うべきであるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
個人事業主や同族会社の経営者の逸失利益算定において、当該事業が本人に「属人的」なものか、それとも「資本的・組織的」なものかを区別する際の基準となる。答案上は、全額を基礎とするのではなく、残存収益や資本寄与分を控除する必要性を指摘する際に引用する。
事件番号: 昭和38(オ)987 / 裁判年月日: 昭和41年4月7日 / 結論: 棄却
不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失の損害賠償債権を相続した者が、当該被害者の死亡により、扶助料の受給権を取得した場合には、当該相続人が請求することができる損害賠償額は、扶助料額の限度において減縮すべきものと解するのが相当である。
事件番号: 平成5(オ)2132 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: その他
一 一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の事故による逸失利益を算定するに当たっては、予測される我が国での就労可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎とするのが合理的であり、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の…