炭坑の出水事故の原因となつた古洞の発見について会社に過失がないとされた事例
判旨
不法行為に基づく損害賠償責任における過失の成否は、結果発生の予見可能性を前提とした結果回避義務違反の有無により判断される。事故の原因となった事実の存在を予見できず、かつ相当の注意を払ってもその存在を確知し得ない場合には、結果回避措置を講じなかったとしても過失は認められない。
問題の所在(論点)
不法行為責任における過失の存否を判断するにあたり、結果発生の原因となった事実(古洞の存在およびガスの蓄積)の予見可能性や、相当の注意によるその確知の可能性がどのように考慮されるべきか。
規範
過失(民法709条)とは、特定の予見可能な結果を回避すべき義務に違反することをいう。したがって、結果発生の基礎となる事実(本件ではガス蓄積のある古洞の存在)について予見可能性が認められない場合、または相当の注意を尽くしても当該事実を確知し得ない場合には、結果回避義務の前提を欠き、過失は否定される。
重要事実
被上告会社が運営する炭鉱の採掘現場において、ガスが蓄積した古洞(古い坑道)からガスが突出し、事故が発生した。上告人は、会社側が取締法規に違反し、または先進ボーリング等の措置を怠った過失があると主張した。しかし、当時の状況として、採掘現場付近に古洞は存在しないと信じられており、会社の代表者や従業員が古洞の存在やガス突出の危険を予測していた事実は認められなかった。
あてはめ
まず、被上告会社の代表者らは、事故当時、古洞の存在やガス蓄積の危険を予測していなかったと認められる。次に、出水事故防止を目的とする所定の施業案に従って先進ボーリングを実施したとしても、実施方法や方向の差異から、本件事故の原因となった古洞を発見することは不可能であった。さらに、その他に相当の注意を払えば当該古洞の存在を確知し得たという証拠も存在しない。したがって、結果発生を予見し、それを回避するためにガス突出防止措置を講じるべき義務があったとはいえず、過失は認められない。
結論
被上告会社に過失があるとはいえず、不法行為責任は成立しない。
実務上の射程
過失の判断において「予見可能性」および「予見可能性を前提とした回避義務」が必要であることを示す。特に対象となる危険(本件では古洞の存在)を認識し得ない客観的状況がある場合に、義務の射程を限定する際の論拠として有用である。また、取締法規違反が直ちに過失の推定に繋がるわけではなく、違反と事故との因果関係が必要である点も示唆している。
事件番号: 昭和57(オ)1411 / 裁判年月日: 昭和58年6月7日 / 結論: 棄却
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