賃貸人と賃借人ないし不法占有者との間には民法第一八九条、第一九〇条の適用はない。
賃貸人と賃借人、不法占有者との間の関係と民法第一八九条第一九〇条の適用の有無
民法189条,民法190条,民法607条
判旨
他人の所有物であっても、その占有者が賃貸することは特段の事情がない限り有効であり、賃貸人は賃借人に対し賃料の請求が可能である。また、賃貸借の当事者間において民法189条、190条(善意・悪意の占有者による果実収取権等)の適用はない。
問題の所在(論点)
目的物の所有権や正当な使用収益権限を有しない占有者が締結した賃貸借契約の有効性と、当該賃貸人が賃借人に対して賃料請求等を行うことの可否。および、これら当事者間に民法189条、190条が適用されるか。
規範
第三者の所有物であっても、その占有者がこれを他人に賃貸することは、特段の事情のない限り有効である。したがって、賃貸人が目的物について所有権や使用収益権限を有さずとも、占有権を有する限り、賃貸借契約に基づき賃料を請求し、また占有権侵害に対する損害賠償を求めることができる。なお、賃貸人と賃借人、または不法占有者との間には、民法189条、190条の規定は適用されない。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、本件建物について所有権または正当な使用収益権限を有していなかった。しかし、被上告人は本件建物を占有しており、上告人ら(賃借人)との間で本件建物の賃貸借契約を締結した。その後、被上告人が上告人らに対し、契約に基づく賃料の支払いや、占有権侵害を理由とする損害賠償等を求めて提訴した事案である。
あてはめ
被上告人は、賃貸借契約締結当時から一定の期間まで本件建物の占有権を有していた。第三者の所有物であっても占有者が賃貸することは原則として有効であるから、被上告人が所有権等を有しないことは、直ちに契約を無効とする理由にはならない。したがって、占有権に基づき賃貸借契約を締結した以上、被上告人は賃借人である上告人らに対して賃料を請求できる。また、契約当事者間や不法占有の関係においては、占有制度一般の果実収取権を定めた民法189条、190条の適用はなく、契約関係等に基づく請求が優先される。
結論
本件賃貸借契約は有効であり、被上告人は上告人らに対して賃料の請求および占有権侵害に基づく損害賠償請求が可能である。
実務上の射程
他人物賃貸借(民法559条、561条準用)が有効であることを前提に、さらに「権限なき占有者」による賃貸借であっても債権的には有効であることを認めた点に意義がある。答案上は、賃貸借の成立に賃貸人の所有権が不要であることの根拠として利用する。また、189条等の適用否定は、契約関係がある場合には契約法理が優先することを明示したものとして重要である。
事件番号: 昭和36(オ)2 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
正当な権原のない建物占有者から賃借して占有している者は、所有者に対し不法占有に基づく損害賠償義務を免れない。(昭和三三年(オ)第五一八号昭和三五年九月二〇日第三小法延判決参照)
事件番号: 昭和38(オ)826 / 裁判年月日: 昭和39年11月17日 / 結論: 棄却
民法第三九五条により競落物件の賃貸人たる地位を承継した競落人が敷金に関する法律関係を当然に承継しなかつたことの立証責任は、競落人の側において負担する。