土地賃借人が賃料の支払を遅滞したときは土地賃貸人は催告を要せず、土地賃貸借契約を解除できる旨の特約は、借地法第一一条にいわゆる借地権者に不利な条件にはあたらない。
借地法第一一条の借地権者に不利な条件にあたらないとされた事例
借地法11条,民法541条
判旨
土地賃貸借契約において、賃料の支払を延滞したときに催告を要せず契約を解除できる旨の無催告解除特約は、借地法11条(現行借地借家法9条等)にいう借地権者に不利なものとはいえず、有効である。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約における「無催告解除特約」は、借地権者に不利な特約を無効とする強行規定(旧借地法11条、現行借地借家法9条等)に抵触し、無効となるか。
規範
賃貸借契約における無催告解除特約は、それが直ちに賃借人にとって一方的に不利な過酷なものとは解されず、借地法11条(現行法の強行規定に対応)が禁止する「借地権者に不利な契約条件」には該当しない。したがって、かかる特約は有効であり、債務不履行の事実があれば催告なく解除権を行使できる。
重要事実
上告人(賃借人)と被上告人(賃貸人)は、本件土地の賃貸借契約において、賃料を3ヶ月分持参のうえ前納することを合意していた。また、契約には、上告人が賃料の支払を怠ったときは、被上告人は催告を要せず契約を解除することができる旨の無催告解除特約が含まれていた。上告人が賃料支払を延滞したため、被上告人は特約に基づき催告なしに解除の意思表示をした。
事件番号: 昭和39(オ)1180 / 裁判年月日: 昭和40年7月2日 / 結論: 棄却
土地賃借人が賃料の支払を延滞したときは土地賃貸人は催告を要せず土地賃貸借契約を解除できる旨の特約は、借地法第一一条の特約にはあたらない。
あてはめ
本件契約における賃料支払時期の合意(3ヶ月分の前納)および無催告解除特約の存在が認定されている。賃借人において賃料延滞という債務不履行の事実が発生した場合、無催告で解除できるとする特約は、社会通念上合理性が認められる範囲内であれば、借地法が保護しようとする借地権者の利益を不当に害するものとはいえない。本件において、支払時期の猶予に関する黙約も認められない以上、特約どおりの解除は有効である。
結論
本件無催告解除特約は有効であり、これに基づきなされた賃貸借契約の解除の効力は認められる。
実務上の射程
本判決は無催告解除特約の有効性を一般論として認めているが、実務上および答案上は、本判決後に出された「信頼関係破壊の法理」との関係に注意が必要である。特約が有効であっても、催告なしの解除が許されるのは「信頼関係が破壊されたと認められる特段の事情」がある場合に限定されると解するのが現在の通説的運用である。
事件番号: 昭和38(オ)627 / 裁判年月日: 昭和39年11月17日 / 結論: 棄却
ただ、相上告人の上告理由中利益なものを援用すると主張する上告理由の記載は、具体性を欠き法定の方式をそなえるものとは認められない。
事件番号: 昭和37(オ)601 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
土地賃借人が賃貸人の申し入れた地代値上の交渉をことさらに回避し、かつ、地下室の建設を禁ずる旨の約定があったのにこれを無視して地下室建設工事に着手し、賃貸人において工事中止もしくは原状回復の催告をしたとしても賃借人がこれに応じたとは到底認め得ないような事情(原判決理由参照)があるときは、賃貸人は、賃借人に著しい不信行為が…
事件番号: 昭和45(オ)631 / 裁判年月日: 昭和47年3月7日 / 結論: 棄却
土地の賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約が合意解約されたが、一方、土地の賃借人が同地上に所有する建物に設定した根抵当権が実行され、右建物が競落された場合において、右合意解約の原因がもつぱら賃借人の賃料不払にあり、また、右競落は、合意解約により右土地の賃借権が消滅したのちであつて、競落人は右賃借権消滅の事実を知悉…
事件番号: 昭和40(オ)1169 / 裁判年月日: 昭和42年9月21日 / 結論: 棄却
無断増改築禁止特約に違反し、借地上の居宅(実測一五坪五合)中九坪五合をバー店舗に改築した場合には、土地賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為として、右賃貸借契約を即時解除することができる。