相互銀行の募集係外務員として雇傭された者が集金係に変つた場合、銀行においてこれを身元保証人に通知しなくても、そのような職務内容の変更があることを予定して身元保証契約が締結されたものであるときは、身元保証人の責任額の決定につき斟酌する必要がない。
職務担当の変更が身元保証人の責任額の決定につき斟酌する必要がないとされた事例
身元保証ニ関スル法律3条,身元保証ニ関スル法律5条
判旨
身元保証人に対する通知義務の有無および損害賠償額の算定において、被用者の任務変更が軽微であり、かつ保証人が当初から予期していた範囲内であれば、通知を怠ったとしても責任の免除や減額の事情として斟酌されない。
問題の所在(論点)
被用者の職務が募集係から集金係に変更されたことが、身元保証法3条1号にいう「任務を変更したため、その責任を加重し、又は監督を困難にするに至ったとき」に該当し、通知を欠いたことが損害賠償額の算定(同法5条)において斟酌されるべき事情となるか。
規範
身元保証法3条1号に基づく通知義務および同法5条に基づく責任制限の成否については、被用者の任務変更が身元保証人の責任を加重し、またはその監督を困難にするような「著しい変更」に当たるか否かによって判断すべきである。任務の性質上、当初から金銭取扱事務が当然に予定されており、かつ変更後の任務が当初の予期の範囲内といえる軽微な変更にとどまる場合には、通知義務違反を理由とする責任の否定や損害額の減額は認められない。
重要事実
身元保証人(上告人ら)は、訴外Dが相互銀行(被上告人)に雇用されるに際し、身元保証契約を締結した。その後、Dの職務は「募集係」から「集金係」へと変更されたが、募集係であっても初回掛金の授受は行うものであった。Dは集金事務において不法行為を行い、被上告人に損害を与えた。上告人らは、募集係として金銭を取り扱わない限定的な契約であったと主張し、任務変更の通知がなかったことをもって責任を争ったが、原審は募集係であっても集金事務を伴うことは当然予定されていたと認定した。
あてはめ
Dの職務は募集係から集金係に変更されたが、相互銀行の業務性質上、募集係であっても初回掛金の収受という金銭取扱事務を当然に行う。集金係への変更により取扱額が増大し、損害発生の危険性が「若干」異なるところがあるとしても、それは「さしたる変更」ではなく、保証人において当初から予期していた範囲内である。したがって、被上告人がこの事実を通知しなかったことは、不法行為による損害賠償責任およびその金額を定めるにあたって、身元保証法5条に基づき斟酌すべき事情にはあたらないといえる。
結論
身元保証人は任務変更の通知欠如を理由に責任を免れることはできず、損害賠償額の減額も認められない。上告棄却。
実務上の射程
身元保証法における「通知義務」や「裁判所の裁量による責任制限」の判断基準を具体化した。特に、任務の変更が形式的にあっても、それが当初の予定の範囲内であり、実質的なリスクの増大が軽微である場合には、通知欠如が即座に有利に働くわけではないことを示しており、実務上の「著しい変更」の限定的解釈に資する。
事件番号: 昭和43(オ)948 / 裁判年月日: 昭和44年2月21日 / 結論: 棄却
被用者の任務等の変更により身元保証人の責任が加重するなどのときには、身元保証人は、身元保証契約を解除することはできるが、これが失効するいわれはない。
事件番号: 昭和37(オ)242 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
身元保証人に関する法律第五条所定の諸事情を斟酌して損害賠償額を量定するにあたり、その算数的根拠を判示する必要はない。