身元保証人に関する法律第五条所定の諸事情を斟酌して損害賠償額を量定するにあたり、その算数的根拠を判示する必要はない。
身元保証人の損害賠償額の量定とその算数的根拠を判示することの要否。
身元保証に関する法律5条
判旨
身元保証法5条による損害賠償額の軽減は裁判所の裁量に委ねられており、その量定にあたり算数的根拠を判示する必要はない。
問題の所在(論点)
身元保証法5条に基づく賠償額の決定において、裁判所はその算数的根拠(計算過程)を判決文に明示する必要があるか。
規範
身元保証法5条は、民法418条や722条2項(過失相殺)と同趣旨の規定であり、所定の事由がある場合に賠償額を実損額より軽減しうる権能を裁判所に付与したものである。軽減額は、認定された諸事情に照応する合理的な範囲内である必要があるが、具体的にどの程度軽減するかは事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。したがって、軽減の量定について必ずしも算数的根拠を判示することを要しない。
重要事実
上告人(身元保証人)は、被用者Dの身元保証をしていた。Dが被上告人(雇用主)に対して損害を与えたため、被上告人が上告人に対し身元保証債務の履行を求めて提訴した。原審は、諸般の事情を考慮して損害額を実損額の半分以下に減軽し、40万円の賠償を命じた。これに対し上告人は、減軽額の算数的根拠が示されていないことは理由不備の違法であるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審は認定した諸事情に基づき、実損額を半分以下に減額して40万円の賠償を命じている。この量定は、裁判所が認定した身元保証に関する諸般の事情に照らして不合理とは認められない。裁判所には広範な裁量が認められている以上、具体的な計算式等の算数的根拠が示されていなくとも、結論が合理的な範囲内にとどまる限り、理由不備の違法があるとはいえない。
結論
裁判所は身元保証法5条の適用による賠償額の算定にあたり、必ずしも算数的根拠を判示する必要はない。原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
身元保証人の責任制限に関するリーディングケース。答案上は、身元保証人の責任の範囲が争点となる際、裁判所の広範な裁量を肯定する根拠として引用する。また、算数的根拠の不分明さを理由とする理由不備の主張を排斥する際の実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和34年12月28日 / 結論: 棄却
一 身元保証契約は、その中で保証人の責任の限度が約定されていなくても、公序良俗に反し無効であるとはいえない。 二 身元保証ニ関スル法律第五条は、同条所定の事情を職権探知事項とする趣旨ではなく、右の事情が訴訟にあらわれた資料によつて認められるときに、裁判所は職権をもつてもこれを斟酌すべきものとするにとどまると解すべきであ…
事件番号: 昭和39(オ)740 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
金銭債権を有する者は、債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり、民法第四二三条第一項本文の規定により、当該債務者に属する権利を行使することができると解すべきである。