身元保証人の保護債務履行遅滞による遅延損害金については、身元保証法第五条の適用がない。
身元保証人の保護債務履行遅滞による遅延損害金に対する身元保証法第五条の適用の有無
身元保証ニ関スル法律5条
判旨
身元保証法5条が定める損害賠償額の減額等の規定は、身元保証人が保証債務の履行を遅滞した場合に生じる遅延損害金には適用されない。
問題の所在(論点)
身元保証法5条による裁判所の裁量的減額の範囲に、身元保証債務の履行遅滞に基づく遅延損害金が含まれるか(同条の適用範囲)。
規範
身元保証法5条は、裁判所が身元保証人の損害賠償の責任およびその金額を定めるにあたり、被用者の監督に関する雇主の過失や身元保証をなすに至った事情等の諸般の事情を斟酌すべき旨を規定している。しかし、身元保証人が確定した保証債務の履行を遅滞した場合における遅延損害金の算定については、同条の規定の適用はないものと解すべきである。
重要事実
銀行員Dが、被上告人である銀行の代理人と称して権限なく貸付けを行い、銀行資金を横領する等の不正行為を行った。これに対し、銀行はDの身元保証人である上告人らに対し、身元保証契約に基づき損害賠償を請求した。上告人らは、身元保証法5条の趣旨に基づき、本案の賠償額だけでなく、履行遅滞に基づく遅延損害金についても同条の規定を適用(あるいは類推適用)して減額すべきであると主張して争った。
あてはめ
身元保証法5条は、身元保証人が負うべき「損害賠償の責任及びその金額」を定める際の考慮要素を規定したものである。これに対し、保証債務の履行遅滞に基づく遅延損害金は、既に確定した保証債務を履行しないことによって生じる法定の損害賠償(民法412条以下)であり、身元保証契約の本来の責任範囲そのものではない。したがって、同条が定める諸般の事情の斟酌は、元本たる保証債務額の算定においてなされるべきものであり、その後の遅滞に基づく損害金については同条の規定するところではない。このような解釈をとっても、身元保証人の過酷な責任を制限しようとする身元保証法6条の特約禁止の趣旨に反するものではない。
結論
身元保証人の保証債務履行遅滞に基づく遅延損害金については、身元保証法5条の適用はないため、同条による減額の対象とはならない。
実務上の射程
身元保証人の責任範囲を限定する身元保証法5条の「射程」を画定した判例である。答案作成上は、身元保証債務の具体的金額を確定させるプロセス(同法5条)と、確定後の履行遅滞による責任(民法一般原則)を区別して論じる必要がある。遅延損害金については減額の余地がないことを簡潔に述べる際に用いる。
事件番号: 昭和37(オ)242 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
身元保証人に関する法律第五条所定の諸事情を斟酌して損害賠償額を量定するにあたり、その算数的根拠を判示する必要はない。