本人が無権代理人を相続した場合において、被相続人の無権代理行為の相手方に過失があるときは、該行為は右相続により有効となるものではない。
本人が無権代理人を相続した場合における無権代理行為の過失ある相手方に対する効力
民法113条,民法117条
判旨
無権代理人を相続した本人が、民法117条2項により無権代理人の責任を免れる場合には、相続によって無権代理行為が当然に有効となることはない。
問題の所在(論点)
無権代理人が死亡し、本人がその地位を単独相続した場合において、相手方に過失があるために民法117条2項によって無権代理人が責任を免れるとき、当該無権代理行為は当然に有効となるか。
規範
無権代理人が死亡し、本人がその地位を相続した場合であっても、相手方が無権代理人の代理権欠如について善意・無過失(民法117条2項)でないときには、無権代理人は責任を負わない。この場合、本人が無権代理人の地位を承継したとしても、無権代理行為が本人において効力を生ずることはない。
重要事実
亡Dは、被上告人(本人)を代理する権限がないにもかかわらず、上告人(相手方)との間で代物弁済予約等の契約を締結した。その後、Dが死亡し、被上告人がDを単独相続した。上告人は、Dに代理権がないことを知らなかったが、そのことについて過失があった。
事件番号: 昭和45(オ)587 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
無権代理人が、無権代理による契約後にその目的物の共有持分を譲り受けた場合においても、契約の相手方が民法一一七条にいう履行を選択した事実がないときは、右持分に対する部分につき、右契約が有効となるものではない(最高裁昭和三八年(オ)第一〇四一号同四一年四月二六日第三小法廷判決、民集二〇巻四号八二六頁参照)。
あてはめ
本件において、上告人はDに代理権がないことを知らなかったものの、そのことにつき過失があった。民法117条2項によれば、相手方に過失があるときは無権代理人は責任を負わない。したがって、Dは生前、上告人に対して無権代理人としての責任を負っていなかったといえる。このような状況下では、本人が無権代理人を相続したとしても、追認を拒絶することが信義則に反するとはいえず、相続によって契約が当然に有効になることはない。
結論
本件代物弁済予約等の契約は、被上告人について効力を生じない。
実務上の射程
本判決は、無権代理人が死亡し本人が相続した事案において、民法117条の責任の有無を基準に相続による当然有効の成否を判断している。答案上は、本人が無権代理人を相続した場合の原則(信義則上の追認拒絶不可)の例外として、相手方が悪意または有過失である場合を摘示する際に活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1340 / 裁判年月日: 昭和39年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親権者の一方が子と利益相反し、他の一方が利益相反関係にない場合でも民法826条が適用され、特別代理人の選任を要する。 第1 事案の概要:未成年者である被上告人の父Fは、自己の債務を担保するため、被上告人名義の土地について代物弁済契約を締結した。この際、父Fは被上告人と利益相反関係にあったが、共同親…
事件番号: 昭和29(オ)976 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
本人の死亡を代理権消滅の原因とする民法第一一一条第一項第一号の規定は、これと異なる合意の効力を否定する趣旨ではない。
事件番号: 昭和35(オ)3 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 破棄差戻
本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。
事件番号: 昭和28(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定代理人である後見人から不動産の処分につき代理権を授与された復代理人が、その後代理人として売買契約を締結した場合、その売買の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:上告人の法定代理人である後見人Eは、訴外Dに対し、本件不動産の処分に関する代理権を授与した。Dは、昭和23年2月20日、後代理人と…