贈与税課税権の消滅時効の起算日は、贈与によつて財産を取得した年の翌年の三月一日であると解するのが相当である。
贈与税課税権の消滅時効の起算日
旧相続税法(昭和30年法律39号による改正前のもの)35条の2,旧会計法(昭和31年法律113号による改正前のもの)31条
判旨
贈与税賦課権の消滅時効の起算日は、贈与による財産取得の日ではなく、申告期限が経過して税務官庁が課税権を行使し得る状態となる「取得した年の翌年3月1日」である。
問題の所在(論点)
贈与税賦課権の消滅時効の起算日(民法166条1項の「権利を行使することを得る時」)は、個別の財産取得時か、それとも申告期限の翌日か。
規範
租税債権の消滅時効は、客観的に「権利を行使することを得る時」から進行する(民法166条1項参照)。申告納税方式が採用されている租税においては、1年間の課税価格の合算および基礎控除・税率適用等の計算を要し、かつ納税義務者の申告期限が経過して初めて税務官庁による更正・決定の行使が可能となるため、その申告期限の翌日が消滅時効の起算点となる。
重要事実
上告人は、夫から家屋の建築費相当額の贈与を受けたとして贈与税の賦課決定を受けた。上告人は、贈与税賦課権の消滅時効の起算日は「贈与による財産取得の日」であると主張し、本件賦課決定は時効期間経過後になされた違法なものであるとして争った。
事件番号: 昭和51(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和52年2月17日 / 結論: 棄却
行政事件訴訟法一四条四項により出訴期間の計算をする場合には、「裁決があつたことを知つた日又は裁決の日」を期間に算入すべきである。
あてはめ
相続税法上、贈与税は1暦年間に取得した財産価額を合計して課税価格を算出し、累進税率を適用する仕組みである。そのため、当該暦年が終了しなければ税額の算出自体が不可能である。また、申告納税制度の下では、納税義務者が翌年2月末日までに申告を行うことが原則とされ、税務官庁が調査に基づき決定を行うことができるのは、この申告期限が経過した時点からである。したがって、税務官庁にとって課税権が「行使し得る状態」になるのは、申告期限が経過した時といえる。
結論
贈与税課税権の消滅時効の起算日は、財産を取得した年の翌年3月1日である。本件において、同日を起点とすれば消滅時効は完成しておらず、賦課決定は適法である。
実務上の射程
本判決は贈与税に関するものであるが、申告納税方式を採る他の租税(所得税や法人税等)における賦課権の除斥期間や消滅時効の起算点を考える際にも、同様の論理(申告期限との関係)が妥当する。税法上の期間制限の法的性質を論ずる際のリーディングケースとして活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)440 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年法律第87号相続税法の下では、相続税と贈与税は厳格に区別されており、相続税に関する延納規定を贈与税に適用することはできない。したがって、贈与税についてなされた延納許可を取り消す処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年法律第87号相続税法に基づき、贈与税の納付について相続…
事件番号: 昭和51(行ツ)13 / 裁判年月日: 昭和51年10月12日 / 結論: 破棄自判
昭和三八年法律第八〇号による改正前の地方税法のもとにおける不動産取得税の賦課権の消滅時効は、当該不動産の所有権取得の日を基準としてこれを起算すべきであり、右所有権取得についての登記又は申告等の日を基準とすべきではない。
事件番号: 平成20(行ヒ)139 / 裁判年月日: 平成23年2月18日 / 結論: 破棄自判
香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が国外財産の贈与を受けた場合において,当該贈与を受けたのが上記赴任の開始から約2年半後のことであり,通算約3年半にわたる赴任期間中の約3分の2の日数を香港の居宅に滞在して過ごし,その間に現地での業務に従事していたなど判示の事実関係の下では,上記期間中の約4分の1の日数を国…
事件番号: 昭和37(オ)1007 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政規則である通達は、行政組織内部での指揮であって国民を拘束する法令ではないため、通達に反する処分であっても直ちに違法とはならず、相続税法9条に基づく課税処分は租税法律主義に反しない。 第1 事案の概要:上告人らは特定の取引により利益を得たが、これに対し税務当局は相続税法9条(贈与擬制)を適用し、…