弁論手続の更新のかしが治ゆされたものと認められた事例
判旨
裁判官の更迭後に弁論の更新がなされないまま訴訟手続が進められたとしても、その後の最終口頭弁論期日において更迭後の裁判官構成のもとで従前の口頭弁論の結果が陳述された場合には、手続上の瑕疵は治癒される。
問題の所在(論点)
裁判官の更迭後に弁論の更新を欠いたまま口頭弁論および証拠調べが行われた場合、その後の期日において弁論の更新がなされれば、当該手続上の瑕疵は治癒されるか。民事訴訟法249条2項の適用の成否が問題となる。
規範
裁判官の更迭があった場合には、直接主義の観点から弁論の更新(民事訴訟法249条2項)を要する。しかし、更迭後に一旦更新を欠いたまま手続が進行したとしても、判決の基礎となる口頭弁論の終結時までに、改めて有効な弁論の更新(従前の口頭弁論の結果の陳述)が行われれば、それ以前の手続的瑕疵は治癒されると解するのが相当である。
重要事実
本件訴訟の控訴審において、第9回口頭弁論期日後に裁判官の一部が更迭されたが、続く第10回期日では弁論の更新がなされないまま証拠調べ等の手続が実施された。しかし、最終弁論期日である第11回期日において、改めて更迭後の裁判官構成のもとで、双方代理人が従前の口頭弁論の結果を陳述し、その上で弁論を終結して判決が言い渡された。
あてはめ
本件では、第10回期日において弁論の更新を欠いたまま手続が進められた点に瑕疵がある。しかし、最終の第11回期日において、裁判官構成に変更があった状態のまま、当事者双方が「従前の口頭弁論の結果を陳述」している。これにより、直接主義が要求する新裁判官に対する弁論内容の提示という目的が果たされたといえる。したがって、先行する期日における更新手続の欠落という瑕疵は、この最終期日における有効な更新によって治癒されたと判断される。
結論
原審の訴訟手続に弁論の更新を欠いた瑕疵があったとしても、最終弁論期日において従前の弁論結果が陳述された以上、その瑕疵は治癒されており、判決に違法はない。
実務上の射程
裁判官の更迭(249条2項)に伴う弁論更新義務違反を主張する場面で、その後の期日における追完(更新)の有無を検討する際の根拠となる。答案上は、直接主義の趣旨に遡りつつ、最終弁論終結時までに手続が整えば足りるという「瑕疵の治癒」の論理として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1159 / 裁判年月日: 昭和29年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の更迭があった場合に更新手続を怠った違法があっても、判決の基本となる口頭弁論において弁論を更新した場合には、当該違法は補正されたものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:本件では、数回の口頭弁論において関与した裁判官の更迭があった。その際、途中の期日において更新手続を怠ったという違法が…
事件番号: 昭和39(オ)787 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
忌避申立を受けた裁判官が忌避申立についての裁判確定前になした判決は、その後右申立が理由なしとして排斥されその裁判が確定するに至つたときは、有効となるものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。