忌避申立を受けた裁判官が忌避申立についての裁判確定前になした判決は、その後右申立が理由なしとして排斥されその裁判が確定するに至つたときは、有効となるものと解するのを相当とする。
忌避申立を受けた裁判官が忌避申立についての裁判確定前になした判決の効力。
民訴法42条
判旨
裁判官の忌避申立てが確定する前に、忌避を受けた裁判官が関与してなされた判決は違法であるが、その後申立てが理由なしとして排斥され確定したときは、当該判決の瑕疵は治癒され、有効なものとして取り扱われる。
問題の所在(論点)
忌避申立てを受けた裁判官が、訴訟手続を停止すべき規定(民訴法26条本文)に違反して判決を言い渡した場合において、その後に当該忌避申立てを理由なしとして退ける裁判が確定したとき、当該判決の効力はどうなるか。
規範
民事訴訟法上の忌避申立てを受けた裁判官は、その申立てについての裁判が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない(民訴法26条本文)。これに違反してなされた裁判は手続規定に違反し違法である。もっとも、後に当該忌避申立てを理由なしとして却下する裁判が確定した場合には、当初から忌避の理由がなかったことが確定するため、当該手続違背の瑕疵は治癒され、有効な裁判として確定するものと解すべきである。
重要事実
上告人らは、原審の裁判官に対して合計2回の忌避申立てを行った。第1の申立てについては、却下決定がなされた後に原判決が言い渡されたが、第2の申立てについては、申立てからわずか3日後、いまだ申立てに対する裁判がなされる前に、忌避を受けた裁判官らによって原判決が言い渡された。その後、第2の申立てについても理由なしとして却下する決定がなされ、即時確定(特別抗告も棄却)した。上告人らは、忌避申立てに対する裁判の確定前になされた原判決は違法であると主張して、その取消しを求めた。
事件番号: 昭和26(オ)790 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停手続が終了するまで訴訟手続を中止すべき場合に、中止せずになされた判決の瑕疵は、その後に調停の申立てが取り下げられ調停手続が終了したことによって治癒される。 第1 事案の概要:被上告人による土地明渡請求に対し、上告人は借地権の存在を主張し、昭和26年9月29日に借地調停を申し立てた。原審は、借地…
あてはめ
第2の忌避申立てがなされた状態で、手続を停止せずになされた本件原判決は、言渡し当時においては訴訟手続の停止規定に違反しており違法といえる。しかし、本件記録によれば、その後当該忌避申立てを理由なしとして却下する旨の決定がなされ、これが確定している。これにより、忌避された裁判官に職務執行の公正を妨げるべき事情が客観的に存在しなかったことが確定したといえる。したがって、手続停止規定に違反したという形式的な瑕疵は、その後の却下決定の確定によって治癒されたと評価するのが相当である。
結論
忌避申立てを排斥する裁判が確定した以上、判決の瑕疵は治癒され、原判決は有効となる。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
忌避申立てによる手続停止規定(26条)違反を理由とする上告・上告受理申立ての事案において、申立てが濫用的であり後に却下された場合の救済否定の論理として活用できる。答案上は、手続違背の有無を検討した上で、結論の妥当性を図る「瑕疵の治癒」の理屈として記述する。
事件番号: 昭和36(オ)375 / 裁判年月日: 昭和36年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官に対する忌避申立てがあった場合、訴訟手続を停止せずに言い渡された判決は一時的に違法となるが、その後に忌避申立てを却下する決定が確定すれば、当該判決は遡及的に有効となる。 第1 事案の概要:上告人は、原審(東京高等裁判所)において担当裁判官に対する忌避の申立てを行った。しかし、原審は訴訟手続を…
事件番号: 昭和28(オ)707 / 裁判年月日: 昭和29年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停申立てがあった場合に訴訟を中止するか否かは、民事調停規則5条に基づき、裁判所の裁量によって決すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、調停の申立てがあったにもかかわらず原審が訴訟手続を中止しなかったことを違法として上告した。また、原審において裁判官の更迭があったにもかかわらず適切な手続が取ら…
事件番号: 昭和49(オ)197 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
一、農地買収計画についての訴願を棄却した裁決が行政事件訴訟特例法に基づく裁決取消の訴訟において買収計画の違法を理由として取り消されたときは、右買収計画は効力を失うと解すべきである。 二、二重訴訟を解消するために前訴が取り下げられても、前訴の請求がそのまま後訴においても維持されている場合は、前訴の提起により生じた時効中断…
事件番号: 昭和29(オ)277 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
一 不動産登記法第四四条にいわゆる「登記済証ガ滅失シタルトキ」とは、登記済証が物質的に滅失したかまたは紛失のため一時所在の判明しないような場合をいうのであつて、登記済証が第三者に交付せられ、現にその手裡に存してたやすく取り戻すことができないと認められるような場合をも包含するものではない。 二 保証書による登記申請が本来…