一 不動産登記法第四四条にいわゆる「登記済証ガ滅失シタルトキ」とは、登記済証が物質的に滅失したかまたは紛失のため一時所在の判明しないような場合をいうのであつて、登記済証が第三者に交付せられ、現にその手裡に存してたやすく取り戻すことができないと認められるような場合をも包含するものではない。 二 保証書による登記申請が本来許されない場合であつても、一たん受理せられて登記がなされた以上は、それが実体的権利関係に合致するかぎり、右登記は有効である。
一 不動産登記法第四四条にいわゆる「登記済証ガ滅失シタルトキ」の意義 二 保証書による登記申請が本来許されない場合にこれに基きなされた登記の効力
不動産登記法44条,不動産登記法35条
判旨
不動産登記において登記済証が第三者の手元にある場合は「滅失したるとき」に該当せず保証書による申請は違法であるが、実体的権利関係に合致する限り、登記申請の形式的瑕疵は治癒され当該登記は有効となる。
問題の所在(論点)
登記済証が物理的に消滅しておらず第三者の手元にある場合に「滅失」といえるか。また、滅失の要件を欠いたままなされた保証書による登記申請に形式的瑕疵がある場合、その登記の効力はどうなるか。
規範
1. 旧不動産登記法44条にいう「登記済証が滅失したるとき」とは、登記済証が物質的に消滅したか、又は紛失のため一時所在が判明しない場合を指し、第三者の手裡にあり容易に取り戻せない場合は含まれない。2. 上記に該当しないにもかかわらず保証書を添付してなされた登記申請は違法であるが、一旦登記がなされた以上、それが実体的権利関係に合致する限り、登記申請の形式的瑕疵は治癒され当該登記は有効となる。
重要事実
訴外Aは、本件土地を上告人に売り渡し、登記済証を交付した。その後、Aは同一の土地を被上告人にも二重に売り渡した。被上告人は、登記済証が既に上告人の手元にあったため、旧不動産登記法44条に基づき登記済証の滅失を理由とする保証書を添付して、いち早く所有権移転登記を完了させた。上告人は、当該登記が「滅失」の要件を欠く違法な申請に基づくものであるとして、その有効性を争った。
事件番号: 昭和51(オ)478 / 裁判年月日: 昭和52年3月31日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする土地賃貸借の賃借人が、賃借地上の建物に登記をしていないため、賃借地を買い受けた者に対し、形式的には、その賃借権をもつて対抗することができない場合であつても、右登記をしていなかつたことに宥恕されるべき事情があり、また、土地の買受人が、賃借権に対抗力のないことを奇貨として、賃借人に対し土地の明渡しを求め…
あてはめ
本件において、登記済証は第一の買主である上告人の手元に存し、売主が容易に取り戻せない状態であったに過ぎず、物質的消滅や紛失にはあたらないため「滅失したるとき」の要件を欠き、保証書による申請は違法である。しかし、被上告人はAから本件土地を買い受けており、登記名義を得るべき実体上の権利を有している。したがって、なされた登記は実体的権利関係に合致しているといえる。この場合、申請手続上の形式的瑕疵は治癒されると解される。
結論
保証書による登記申請は手続上違法であるが、実体的権利関係に合致する限り、その瑕疵は治癒され、登記は有効である。
実務上の射程
登記申請手続の適法性と、なされた登記の実体法的有効性を切り離して考える実務上の重要判例である。答案上は、登記の有効性を論じる際に「手続に瑕疵があっても実体的権利関係に合致すれば有効」という一般原則の根拠として、不動産登記法(現行法下の事前通知制度等)の文脈で引用できる。
事件番号: 昭和43(オ)717 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
甲所有の丁土地と乙所有の戊土地とを交換する契約が甲乙間になされ、乙が丁土地をさらに丙に譲渡して未だその登記を経ない間に、乙に対する国税の滞納処分として戊土地が差押公売されたため、甲が履行不能を理由に右交換契約を解除した場合において、甲が、交換契約に基づき戊土地を自ら使用しており、他方右契約当時においても丁土地が乙から丙…
事件番号: 昭和39(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和42年2月17日 / 結論: その他
保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合に、その後保証人が当該物件の給付義務の履行をすることができる地位を取得したときは、債権者は保証人に対し右物件の給付義務の履行を求めることができる。
事件番号: 昭和37(オ)54 / 裁判年月日: 昭和39年4月21日 / 結論: 棄却
株式会社の清算結了の登記があつても、会社を被告とする給付訴訟が係属するときは、清算結了とはいえないから、会社は消滅しない。
事件番号: 昭和39(オ)787 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
忌避申立を受けた裁判官が忌避申立についての裁判確定前になした判決は、その後右申立が理由なしとして排斥されその裁判が確定するに至つたときは、有効となるものと解するのを相当とする。