保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合に、その後保証人が当該物件の給付義務の履行をすることができる地位を取得したときは、債権者は保証人に対し右物件の給付義務の履行を求めることができる。
特定物の給付を目的とする債務についての保証人に対し当該物件の給付義務の履行を求めることができるか
民法446条
判旨
賃借人の保証人は、賃貸借契約解除に伴う目的物の返還義務(明渡義務)についても保証債務を負うが、自ら当該物件を占有するなどして履行し得る地位にない限り、直接の明渡義務は負わない。保証人が履行不可能な状態にある場合、債権者は保証人に対し、履行不能による損害賠償を求め得るにとどまる。
問題の所在(論点)
賃貸借契約上の債務を保証した保証人は、賃貸借終了に基づく目的物返還義務(土地明渡義務)について、自ら占有していない場合であっても直接の履行(明渡し)を義務付けられるか。
規範
保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合、債権者が保証人に対して当該物件の直接の給付(履行)を求めるためには、保証人が何らかの事由によって当該物件の給付義務を履行できる地位を取得していることを要する。保証人が履行できる地位にないときは、債権者は保証人に対し、履行不能による損害賠償を求め得るにとどまる。
重要事実
土地賃貸人D(先代)と賃借人Eとの間で土地賃貸借契約が締結され、A1がEの保証人となった。Eの死亡後、相続人A2らが賃借人の地位を承継したが、賃料不払により本件契約は適法に解除された。被上告人(賃貸人側)は、保証人A1に対し、保証債務の履行として土地の明渡しおよび賃料相当損害金の支払を求めた。原審は、A1が土地を明け渡すことができる地位にあるか否かを確定しないまま、明渡請求を認容した。
あてはめ
保証人A1は、主債務者である賃借人が負う賃貸借契約解除後の原状回復義務(土地明渡義務)について保証債務を負う。しかし、A1が本件土地を実際に占有している、あるいは返還をなし得る法的・事実的な地位にあるかという点について、被上告人による主張立証はなく、原審においても確定されていない。履行が不可能な状態にある者に直接の給付を命じることはできず、地位の取得が認められない以上、A1に対する直接の明渡請求は認められない(損害賠償の問題となり得るにとどまる)。
結論
保証人に対し、土地を明け渡すことができる地位にあることが証明されない限り、直接の明渡請求をすることはできない。したがって、原審の明渡請求認容部分は破棄され、請求は棄却される。
実務上の射程
賃貸借の保証人の責任が、解除後の目的物返還義務にまで及ぶことを前提としつつ、執行の可能性や履行の実現性を考慮し、現実に返還し得る地位にない保証人への直接の引渡し・明渡請求を否定したもの。答案上は、保証人の責任範囲(447条1項)を論じた後、具体的履行の可否の文脈で、占有の有無等を確認する際に活用すべき判例である。
事件番号: 昭和37(オ)1165 / 裁判年月日: 昭和39年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の合意解除が認められない状況下で、転借人が賃貸人の承諾を得て賃借人(転貸人)に賃料を支払った場合、その支払は民法613条の趣旨に照らし、賃貸人に対する関係でも有効な支払として免責の効果が生じる。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(訴外D)との間の賃貸借契約が存続している状況にお…
事件番号: 昭和39(オ)177 / 裁判年月日: 昭和39年9月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸人が賃借人の賃料不払と無断転貸の二重の理由により賃貸借契約を解除したときは、賃借人より地上建物を買受けた者は、建物買取請求権を行使することができない。
事件番号: 昭和39(オ)977 / 裁判年月日: 昭和40年2月19日 / 結論: 棄却
土地所有者が、該土地賃借人に対して賃料請求権を有するからといつて、これがため建物所有者(無断転借人)の敷地不法占有により土地所有者に賃料相当の損害を生じないとはいえない。
事件番号: 昭和41(オ)419 / 裁判年月日: 昭和41年11月1日 / 結論: 棄却
判示事情(判決理由参照)のあるときは賃料不払を理由とする賃貸借契約の判示解除は信義則に反し許されない。