控訴審口頭弁論において、原審口頭弁論の結果を陳述するに際し、「第一審判決事実摘示のとおり陳述する」旨弁論したときは、第一審の口頭弁論で主張した事項であつて、第一審判決の事実摘示に記載されていない事実は、控訴審口頭弁論では陳述されなかつたことになる。
控訴審口頭弁論における「第一審判決事実摘示のとおり陳述」の意味
民訴法377条,民訴法186条
判旨
債務者が弁済に際して充当すべき債務を指定しない場合、債権者は適法に充当をなすことができる。また、原審で主張していない弁済や相殺の事実を上告審で新たに主張して判決を非難することは許されない。
問題の所在(論点)
1. 債務者が充当の指定をしない場合における債権者の指定充当の可否。2. 原審で主張していない事実(弁済・相殺)を上告審で主張することの可否。
規範
債務者が弁済をなす際、民法488条1項(当時。現行法も同旨)に基づく充当の指定をしないときは、債権者は同条2項に基づき、弁済受領時に受領者がした充当の指定(指定充当)によって、適法に債務を消滅させることができる。また、民事訴訟法上の原則として、原審(控訴審)において主張しなかった新たな攻撃防御方法を上告理由とすることはできない。
重要事実
債務者である上告人は、債権者である被上告人に対し複数の債務を負っていたが、ある債務の弁済に際してどの債務に充当するかを指定しなかった。これに対し、被上告人は本件債務とは別の債権への充当を行った。上告人は第一審および控訴審において、弁済や相殺の事実について適切な主張を行っていなかったが、上告審に至ってこれらの事実を前提に原判決の違法を主張した。
あてはめ
1. 本件では、債務者である上告人が弁済すべき債務の指定をなさなかった事実が証拠により認められる。これに対し、債権者である被上告人が他の債権へ充当した行為は、当時の民法の規定に則った適法な充当といえる。2. 上告人は原審において、第一審判決の事実摘示通りの陳述をなしており、弁済や相殺の事実は主張されていなかった。したがって、原審で審理されていない事実に基づき原判決を非難することは、民事訴訟法上の上告の性質に照らし許されない。
結論
1. 債権者による充当は有効であり、本件債務は消滅していない。2. 原審で主張のない事実に依拠する上告理由は採用できない。
実務上の射程
弁済充当の指定権が債務者から債権者へ移転する場面の確認として利用できる。答案上は、弁済の抗弁における充当の成否が争点となる際に、指定の有無と債権者による指定の有効性を論じる根拠となる。また、上告理由の制限という訴訟法上の基礎原則を示す事案でもある。
事件番号: 昭和26(オ)927 / 裁判年月日: 昭和28年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が民事上告事件の審判の特例に関する法律に定める事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。単なる訴訟法または実体法の違反の主張は、憲法違反の主張には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原判決には法令の解釈に関する重要な誤りや、憲法違反があるとして…