土地の賃貸借契約が当初甲市内に散在していた露天商を一時整理収容するために市役所等のあっせんにより期間を一年と限って成立し、その後借地人らの申出によって期間を限って契約が再三更新され、かつ、最終の契約においては、期間を一年三箇月とし賃貸人の許可なく組立式以外の建物の築造を禁止し、夜警以外の居住を禁止するなど原判決の認定の事情のもとにおいては、借地人らが一一年間にわたって適法に占有していたとしても、右借地権を、一時使用のための借地権であると認定することは許されないわけではない。
一時使用のための借地権とされた事例。
借地法9条
判旨
借地法上の「一時使用の目的」による借地権といえるかは、契約成立の経緯、借地期間、土地の使用態様、合意の内容等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、約11年という長期間の使用実態がある場合に、借地法(旧法)の適用を排除する「一時使用のための借地権」に該当するか。
規範
借地法(現行借地借家法25条)の適用を排除する「一時使用の目的」が認められるかは、単に合意の名称のみならず、①契約成立の動機・経緯、②存続期間の定めの有無・程度、③地上建物の種類・構造等の使用態様、④賃料の額その他の合意内容を総合考慮して、短期間に限って賃貸借関係を存続させる合意があったといえるか否かにより判断する。
重要事実
上告人らは、昭和24年11月より11年間にわたり、本件土地を適法に使用していた。本件借地契約は、当初、宮崎市内に散在していた露天商を一時的に整理収容するため、市役所等のあっせんにより、期間を1年と限って成立した。その後、上告人らからの申し出により、期間を限って契約更新が繰り返されていた経緯があった。
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
あてはめ
本件では、使用期間が11年に及んでいるものの、当初の契約動機が露天商の一時的整理という臨時的なものであり、行政の介入による特殊な経緯で成立している。また、契約更新の際も常に期間が限定されており、永久的な使用を前提としていなかった。このような成立の経緯や更新の態様等の諸事情を総合すれば、短期間の使用を目的とした合意であったと評価される。
結論
本件借地契約は一時使用の目的でなされたものと認められ、借地法の適用は排除される。
実務上の射程
たとえ実際の使用期間が10年を超える長期間に及んでいたとしても、成立の経緯や目的が臨時的であれば一時使用目的が肯定され得ることを示した。司法試験においては、借地借家法25条の適用の有無を検討する際、単なる期間の長短だけでなく「目的の臨時性」を客観的諸事情から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
事件番号: 昭和34(オ)879 / 裁判年月日: 昭和35年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地および建物の賃貸借が、借地法(現借地借家法25条)および借家法(現借地借家法40条)にいう「一時使用」にあたるかは、賃貸借成立の経緯、使用目的、建物の規模構造、期間の定めおよびその理由等を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:土地および土蔵の賃貸借契約において、賃貸期間が短期に定め…
事件番号: 昭和29(オ)7 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】建物の売買に際し、買主が将来の一定期日までに建物を取り壊して運搬することを約し、その期日までの短期間に限り土地を賃貸した場合は、一時使用のための借地権(旧借地法9条)に該当する。このような一時使用の属性は契約の本質に関わるため、前提事実の認識に誤りがあれば民法95条の錯誤無効を招き得る。 第1 事…
事件番号: 昭和43(オ)52 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一時使用の目的で賃借した土地上に建築された仮設建物を買い受けるとともに賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡を受けた者との間で、賃貸人が土地の一部を右譲受人に売却し、他を明け渡す旨の約束ができたが、譲受人が代金を払わないため右売買契約が解除され、そのため右土地の明渡について話合がされ、結局一〇年の賃貸借契約が締結されるに至つた…