部分林収益分収持分の譲渡契約において営林局長の許可を停止条件とする旨の約定がなされていなくても、右許可により権利移転の効力を生ずる。
部分林収益分収持分の譲渡契約において営林局長の許可を停止条件とする旨の約定がない場合における右契約の効力。
国有林野部分林規則(明治32年勅令362号)3条
判旨
法令により権利移転に許可を要する場合、契約において特段の約定がなくても、当該許可を停止条件とする権利移転の効力が生じる。また、許可を条件とする移転登記請求や許可申請手続の請求も認められる。
問題の所在(論点)
法令上、権利移転に許可が必要な場合、契約において明示的な停止条件の合意がないときでも、許可を条件とする権利移転の効力を認めることができるか。また、そのような場合に許可申請手続や条件付登記の請求が可能か。
規範
法令によって権利の移転に公的機関の許可が義務付けられている場合、その許可は契約の効力発生を左右する法的条件となる。したがって、当事者間に特段の合意がなくとも、当該許可を得ることを停止条件として権利が移転する旨の契約が成立したものと解される。また、債権者は債務者に対し、協力義務として許可申請手続を請求でき、許可を条件とする登記手続の請求も可能である。
重要事実
本件では、農地の所有権移転に青森県知事の許可が、部分林収益分収持分の移転に青森営林局長の許可がそれぞれ法令上必要であった。被上告人は上告人に対し、これらの権利移転を目的とする契約に基づき、許可申請手続の履行および農地については知事の許可を条件とする所有権移転登記手続を求めて提訴した。
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
あてはめ
農地法等の法令により許可が移転の要件とされている以上、その許可が得られるまでは物権変動の効力が発生しないことは当然の理である。本件契約において「許可を停止条件とする」旨の明文の約定がなくても、法令の定めに従い、許可を停止条件とする権利移転の合意が含まれていると解するのが合理的である。また、契約の目的を達成するために必要な協力義務として許可申請手続の請求が認められ、条件成就後の対抗要件具備を確実にするための条件付登記請求も適法である。
結論
許可を停止条件とする特段の約定がなくとも、許可により権利移転の効力を生ずる。許可申請手続および許可を条件とする登記手続の請求は認められる。
実務上の射程
農地法3条等の許可を要する取引全般に適用される。実務上、許可が得られる前の段階で、買主が売主の非協力を防ぐために「許可申請手続」や「許可を条件とする移転登記」を求める際の確固たる根拠となる判例である。
事件番号: 昭和30(オ)321 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買において、都道府県知事の許可を停止条件とする契約を締結することは農地法(旧農地調整法)に反せず、許可が得られた場合には、売主は地目変換の申告や登記手続等の契約上の義務を履行する責任を負う。 第1 事案の概要:買主(被上告人)は、農地を工場敷地として利用するため、売主(上告人)との間で本件…
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
事件番号: 昭和28(オ)315 / 裁判年月日: 昭和29年7月16日 / 結論: 破棄差戻
臨時農地等管理令第七条ノ二の地方長官の許可は、農地の所有権移転を目的とする契約の有効要件ではない。