甲が乙に案内されて銀行に赴き、係員に対し、預金の金員および自己の印鑑(第三者名義)を提出して、無記名定期預金をする旨の申出をなし、係員から該銀行発行の無記名定期預金証書の交付を受け、右印鑑とともに保管していた等原判示事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、たとい乙において右銀行係員に対し、右預金を暗に自己の預金であるかのように装つた疑があるとしても、右預金の債権者は甲であると認めるを相当とする。
無記名定期預金債権者の判定の事例
民法666条
判旨
無記名定期預金において、銀行に対する預金債権者が誰であるかは、預金契約の締結に至る経緯、資金の出捐者、預金通帳・印鑑の管理状況等の事実関係を総合考慮して決せられる。
問題の所在(論点)
無記名定期預金において、当該預金債権が誰に帰属するかという預金契約の当事者確定の基準が問題となる。
規範
預金契約の当事者の確定は、契約締結の際の意思表示の解釈の問題であり、当該預金の名義にかかわらず、資金の拠出者、通帳及び印鑑の管理状況、預金に至る経緯等を総合的に考慮して、誰が当該預金の帰属主体(債権者)であるかを判断する。
重要事実
本件は、無記名定期預金の債権者が誰であるかが争われた事案である。原審(二審)は、証拠関係に基づき、被上告人を当該預金の債権者であると認定した。上告人はこの事実認定を不服として上告したが、具体的な事実関係の詳細は本判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実関係(詳細は不明ながら、証拠に基づき被上告人を債権者とした判断)を前提とすれば、被上告人を債権者とした判断は正当であるとした。これは、預金の名義という形式的要素よりも、実質的な資金の拠出や管理・支配の状況を重視して当事者を確定する枠組みを是認したものといえる。
結論
被上告人を本件無記名定期預金の債権者とした原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
預金者の確定に関するリーディングケースの一つである。実務上、名義人と出捐者が異なる預金(借名預金等)の帰属が問題となる場合、名義のみに拘泥せず、本件のように諸般の事情を総合考慮して判断すべきことを示唆している。答案上は、契約当事者確定の一般論として、客観的な意思表示の解釈に資する諸要素を列挙する際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(オ)485 / 裁判年月日: 昭和32年12月19日 / 結論: 棄却
一 いわゆる無記名定期預金債権は無記名債権でなく氏名債権に属する。 二 甲が乙に金員を交付して甲のため無記名定期預金の預入れを依頼し、よつて乙がその金員を無記名定期預金として預入れた場合、乙において右金員を横領し自己の預金としたものでない以上、その預入れにあたり、乙が、届出印鑑として乙の氏を刻した印鑑を使用し、相手方の…
事件番号: 昭和52(オ)343 / 裁判年月日: 昭和52年8月9日 / 結論: 棄却
記名式定期預金が預入行為者名義のものであり、その名義の使用が出捐者の意思に基づく場合であつても、出捐者が預入行為者に対し、自己の預金とするために金員を出捐して預入行為者の名義による記名式定期預金の預入手続を一任し、預入行為者が出捐者の使者又は代理人として預金契約を締結したものであり、かつ、預金証書及び届出印章は出捐者が…