銀行のため質権の目的とされていた右銀行に対する定期預金債権につきいわゆる書替が行われた場合には、右書替にあたり、預金名義が預金者の仮名であつたのを預金者の氏名に改め、既経過分の利息を右銀行において任意に支払うなど判示の事情があつても、質権は当該新定期預金債権に及ぶと解することができる。
質権が設定された定期預金権が書き替えられた場合において質権が当該新定期預金債権に及ぶとされた事例。
民法363条
判旨
定期預金の書き換えに際し、預金が現実に払い戻されることなく証書のみが更新された場合、同一預金者の定期預金として継続関係が認められ、当初の質権設定契約の効力は書き換え後の預金にも及ぶ。
問題の所在(論点)
当初の定期預金に設定された質権の効力が、証書の書き換えによって成立した後の定期預金に対しても存続し、その効力が及ぶか。
規範
定期預金の書き換えにおいて、現実に預金の払い戻しが行われず、単に証書のみが更新されたときは、実質的に同一の預金者による定期預金として継続性が認められる。この場合、特段の事情がない限り、当初の預金に対して設定された質権の効力は、書き換え後の新たな定期預金に対しても当然に及ぶ。
重要事実
上告人は、昭和30年に仮名を用いて銀行に200万円(100万円二口)の定期預金を預け入れ、同時に銀行が第三者に対して有する貸付債権を被担保債権として、当該預金に質権を設定した。その後、預金は数回書き換えられ、昭和32年には上告人本人の名義で200万円一口の定期預金となった。この書き換えの際、預金は現実に払い戻されず、証書の更新のみが行われた。
あてはめ
本件では、当初の仮名名義の預金から上告人本人名義の預金への変更を含め、数回の書き換えが行われているが、いずれも現実に預金が払い戻されることなく証書の更新のみが行われている。そのため、これらの一連の預金は同一預金者による定期預金として継続関係にあるといえる。利息が任意に支払われた等の事情があっても、預金自体の同一性・継続性は失われないため、当初設定された質権の効力は本件定期預金に維持されていると解される。
結論
本件定期預金には当初の質権の効力が及ぶため、銀行による質権の主張は正当である。
実務上の射程
預金債権の書き換え(更改的更新)があった場合でも、当事者の意思として担保保存の黙示の合意を認め、質権の付随性を肯定する実務上の指針となる。担保保存の特約がない場合でも、実質的な継続性が認められれば質権が消滅しないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和38(オ)600 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
原判決確定の事実関係のもとにおいては(原判決理由参照)、被上告人(控訴人)を債権無記名定期預金の債権者であると解すべきである。
事件番号: 昭和52(オ)343 / 裁判年月日: 昭和52年8月9日 / 結論: 棄却
記名式定期預金が預入行為者名義のものであり、その名義の使用が出捐者の意思に基づく場合であつても、出捐者が預入行為者に対し、自己の預金とするために金員を出捐して預入行為者の名義による記名式定期預金の預入手続を一任し、預入行為者が出捐者の使者又は代理人として預金契約を締結したものであり、かつ、預金証書及び届出印章は出捐者が…