判決言渡と裁判所書記官の判決原本領収との間に五十余日の経過があるからといつて、該判決が原本に基づかないで言い渡されたと認めなければならないことはない。
裁判所書記官の判決原本領収の時期と原本に基づく判決言渡
民訴法189条
判旨
判決の言渡しは判決原本に基づいて行うべきであるが、口頭弁論調書に原本に基づき言い渡した旨の記載がある以上、後日に書記官が原本を領収するまで期間を要したとしても、直ちに原本に基づかない違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
判決の言渡しが判決原本に基づかずになされたという違法があるか。特に、言渡しから書記官の原本領収までに相当期間の経過があることが、原本に基づかない言渡しを推認させる事由となるか。
規範
判決の言渡しは、特段の事情がない限り、裁判長が判決原本に基づいて主文を朗読することによって行うことを要する。手続の適法性は口頭弁論調書の記載(民事訴訟法160条2項参照)によって証明されるべきであり、調書上原本に基づいた旨の記載がある場合には、反証のない限りその適法性が推認される。
重要事実
上告人は、原審(二審)判決が原本に基づかないで言い渡されたと主張して上告した。その根拠として、原判決の言渡しの日から裁判所書記官が判決原本を領収するまでに約50日もの経過(期間の乖離)があることを指摘した。しかし、当該事件の判決言渡期日の調書には、「裁判長は判決原本に基いて主文を朗読し判決を言渡した」との記載が存在していた。
あてはめ
本件では、判決言渡期日の調書において、裁判長が原本に基づき主文を朗読し言渡しを行った旨が明確に記録されている。上告人は、書記官の原本領収までに50余日の経過があることを強調するが、書記官による事務的な原本受領の遅延という事実は、直ちに裁判官が言渡時に原本を所持していなかったことを裏付けるものではない。したがって、調書の記載を覆すに足りる事情とは認められず、言渡手続は適法になされたと解される。
結論
原判決が原本に基づかないで言い渡されたとの主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟手続の適法性が争点となる場面、特に判決言渡しの有効性を争う際に、調書の証明力(民訴法160条2項)の強さを示す基準として機能する。事務的な処理の遅れが直ちに裁判手続の核心部分の違法を導くものではないことを示唆している。
事件番号: 昭和26(オ)592 / 裁判年月日: 昭和27年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】書証の原本と写しの同一性に関する事実誤認の主張は、単なる手続違背の主張にすぎず、憲法32条違反等の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審に提出された書証(甲第5号証)の写しが口頭弁論に顕出された原本と異なる内容であるにもかかわらず、原判決がこれを原本と即断・誤解して事実認定の資…
事件番号: 昭和39(オ)53 / 裁判年月日: 昭和39年11月27日 / 結論: 棄却
記録簿から抜き書きしたうえこれに説明を加えた書面は、それ自体が書証原本として提出されたものであるかぎり、証拠とするにさまたげない。
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和30(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき違法があるか否かは、認定の基礎となった証拠の一部に瑕疵があったとしても、他の証拠によって事実認定を維持できる場合には否定される。 第1 事案の概要:原審において事実認定の基礎とされた証拠のうち、乙第二号証および第三号証について、上告人は「単に市長へ届け出られた書類であることを…