記録簿から抜き書きしたうえこれに説明を加えた書面は、それ自体が書証原本として提出されたものであるかぎり、証拠とするにさまたげない。
記録簿から抜き書きしたうえ加筆説明した書面の証拠能力。
民訴法311条
判旨
証拠資料としての書面の原本が提出されたか否かは事実認定の問題であり、記録簿から抜き書きして作成された書面そのものが原本として顕出されたと認められる場合には、手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
証拠として提出された書面が、元の記録簿からの抜き書きである場合に、その書面自体を原本として取り扱い、証拠として採用することの是非(民事訴訟法上の事実認定の適法性)。
規範
民事訴訟における証拠の取捨判断および事実の認定は、原則として原審の専権に属する。書証において原本が法廷に顕出されたか否か、あるいはその原本の成立の真正や証拠価値については、裁判所の自由な心証によって判断されるべき事項である。
重要事実
上告人は、証拠として提出された乙八号証(「A交渉経過」と題する書面)について、その原本は「記録簿」であるはずであり、法廷に原本が顕出されていない、あるいは修正加筆の疑いがあるため証拠として採用できないと主張した。しかし、実際には担当者Dが記録簿から抜き書きし、説明を加えて作成した書面自体が乙八号証の原本として提出されていた。
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
あてはめ
本件において、乙八号証の原本は、上告人が主張する「記録簿」そのものではなく、そこから抜き書きして作成された「A交渉経過」と題する書面自体であることが記録上明らかである。したがって、当該書面が法廷に提出されている以上、原本が顕出されていないという上告人の主張は前提を欠く。また、内容の修正等の疑いについても、原審の証拠取捨判断の範囲内であり、適法に処理されていると解される。
結論
乙八号証の原本は提出されていると認められ、原審の証拠判断に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
書証の原本に関する事実認定の判断を示したものであり、実務上は「原本の定義」や「証拠能力の有無」が争点となる場面で、原審の裁量を肯定する判例として引用し得る。ただし、本判決は具体的な事実認定の妥当性を述べるにとどまり、広範な規範を提示するものではない。
事件番号: 昭和28(オ)128 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に証拠番号の誤記があったとしても、それが単なる表記上の誤りであることが明白な場合には、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:原判決において、配当期日呼出状が送達された事実を認定する際、その証拠として「乙第三号証の一乃至三」と記載された。しかし、実際には当該事実は「乙第三号証の一乃至五」に…
事件番号: 昭和37(オ)1068 / 裁判年月日: 昭和39年11月17日 / 結論: 棄却
答弁書たる標題を掲げた書面であつても、請求の趣旨に対する反対申立の記載を含まないものは、通常の準備書面と同じく、法定の印紙の貼用を要しない。
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。
事件番号: 昭和38(オ)350 / 裁判年月日: 昭和41年4月12日 / 結論: その他
物件の所有者であることを理由とし、その物件についての所有権移転登記の抹消を求める訴訟において、被告が、抗弁として、原告が甲に対し代物弁済により右物件の所有権を移転した旨を主張したところ、原告から甲への所有権移転を認容したうえ、さらに、原告は甲から右物件を買い戻したが、後にこれを乙に対し譲渡担保として移転し、結局、原告は…