答弁書たる標題を掲げた書面であつても、請求の趣旨に対する反対申立の記載を含まないものは、通常の準備書面と同じく、法定の印紙の貼用を要しない。
請求の趣旨に対する反対申立の記載を含まない答弁書と法定の印紙貼用の要否。
民事訴訟用印紙法10条,民事訴訟用印紙法11条
判旨
請求の趣旨に対する答弁(反対申立)を含まない書面は、標題が「答弁書」であっても準備書面と同様に印紙貼付を要さず、形式的瑕疵が軽微であれば陳述擬制の対象となり得る。また、主要事実ではない間接事実については、裁判所は当事者の主張がなくても認定でき、かつ判決理由で個別に摘示判断する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 請求の趣旨に対する答弁を含まない「答弁書」と題する書面に印紙貼付が必要か。2. 形式的不備のある書面につき陳述を擬制し、証拠資料とすることの可否。3. 間接事実についての当事者の主張の要否および判決書での判断の要否。
規範
1. 請求の趣旨に対する答弁(反対申立)の記載を含まない書面は、たとえ「答弁書」との標題が掲げられていても、通常の準備書面と同様に印紙の貼用を要しない。2. 答弁書の形式に合致しない点があるとしても、直ちに無効とはならず、陳述擬制(民訴法158条等)を排除すべき程度の瑕疵がない限り、事実認定の資料とすることができる。3. 主要事実を推認させるにすぎない「間接事実」については、弁論主義の適用外であり、当事者の主張を待たずに認定可能であるとともに、判決書における摘示・判断も必須ではない。
重要事実
上告人は、Bから本件山林を買い受けたと主張して所有権を争ったが、原審で退けられた。Bが第一審で提出した書面は「答弁申上ます」と題し、内容に私的な事情を含んでいたが、本訴請求の趣旨に対する具体的な反対申立の記載を欠き、かつ法定の印紙も貼付されていなかった。第一審はこの書面の内容を陳述擬制し、事実認定の資料とした。上告人は、当該書面が答弁書の要件を欠き無効であること、および特定の印鑑届等の間接事実について判断遺脱があることなどを理由に上告した。
事件番号: 昭和38(オ)710 / 裁判年月日: 昭和41年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産譲渡の合意の成立が認められない以上、その合意に至る経緯としての周辺事実(賃借権の存在等)について個別に判断を示さなくとも、理由不備や判断遺脱の違法は存しない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、訴外Fとの間で、Fが国から本件土地の払下げを受けることを停止条件として、本件土地を上告人に譲渡す…
あてはめ
1. B提出の書面には請求の趣旨に対する反対申立がないため、準備書面と同様に印紙貼付は不要である。2. 書面に民訴法所定の形式に合致しない点があっても、無効として陳述擬制を排除すべき程度の瑕疵とはいえないため、これに基づき陳述を擬制し事実認定の資料とした原審の判断は適法である。3. 上告人が主張する印鑑届の事実や必要性の存否等は単なる間接事実にすぎず、裁判所は当事者の主張なしにこれを認定でき、判決で個別に摘示・判断せずとも判断遺脱の違法はない。
結論
B提出の書面の陳述擬制および事実認定の資料化は適法であり、また間接事実の摘示欠落も判決の違法を構成しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
陳述擬制の対象となる「答弁書」の解釈、および弁論主義・理由不備の対象が「主要事実」に限定されるという民事訴訟法の基本原則を確認する際の実務上の指針となる。
事件番号: 昭和39(オ)53 / 裁判年月日: 昭和39年11月27日 / 結論: 棄却
記録簿から抜き書きしたうえこれに説明を加えた書面は、それ自体が書証原本として提出されたものであるかぎり、証拠とするにさまたげない。
事件番号: 昭和35(オ)1081 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
民訴法第一八六条所定の申立には、個々の攻撃または防禦方法である主張または抗弁は含まれない。
事件番号: 昭和27(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
定款に記載された現物出資およびその履行が真実有効になされたかどうかは、人証その他一般の証拠から判定し得るのであつて、必ずしも会社設立のため作成された書類のみによつて決定しなければならぬものではない。
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。