使用貸借の解約告知に基づく家屋明渡訴訟を維持し口頭弁論を行なつた場合には、もしさきの解約告知の効力が認められないとすればあらためて解約告知をなす意思を、弁論の都度表示したものと解すべきであり、告知の時期を異にすることにより、明渡請求権が別個の権利となるものではない。
使用貸借の解約告知に基づく家屋明渡訴訟の口頭弁論により新たな解約告知をしたものと認められた事例
民法597条,民訴法186条
判旨
返還時期も使用収益の目的も定めがない使用貸借において、成立の経緯や利用状況等の諸事情に照らし、信義則上相当な期間が経過するまで解約告知が制限される場合がある。また、当初の解約告知が時期尚早であっても、訴訟継続中に相当期間が経過すれば、口頭弁論終結時までの解約告知の意思表示の維持をもって契約は終了する。
問題の所在(論点)
返還時期等の定めのない使用貸借において、貸主はいつでも解約告知ができるか。また、告知後の期間経過により契約終了を認めることは弁論主義に反しないか。
規範
返還時期および使用収益の目的の定めがない使用貸借(民法597条3項、現598条2項)であっても、借主が従前の居住建物を収去して貸主の建物建築に協力した等の特殊な経緯がある場合には、貸主による解約告知権の行使は、信義則上相当と認められる期間を経過した後でなければなしえない。また、当初の解約告知が時期尚早であったとしても、訴訟を通じて明渡請求の態度を維持し続けている場合には、相当期間の経過後に改めて解約告知をなす意思を弁論の都度表示してきたものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は、自己の住居を取り壊してその敷地を被上告会社(貸主)に利用させ、同社が建築した本件家屋の2階部分を社宅として使用貸借していた。返還時期や目的の合意は認められなかった。貸主は、上告人が取締役を解任されたことに伴い解約告知を行い、明渡訴訟を提起した。上告人は、成立経緯(居住建物の収去)から終生または20〜30年間の居住権があると主張して争った。
あてはめ
本件では、上告人が自らの住居を収去して貸主に土地を利用させた等の経緯があるため、直ちに使用貸借の解消を認めるのは相当ではなく、信義則上相当な期間の使用収益を認めるべきである。しかし、成立から約9年が経過した原審口頭弁論終結時においては、右相当期間はすでに経過したといえる。貸主は訴訟を通じて明渡請求の態度を維持しており、期間経過後に改めて解約告知を行う意思が弁論の都度表示されていたと解されるため、最終弁論期日における告知により契約は終了したと認められる。
結論
本件使用貸借は、信義則上相当な期間が経過した原審口頭弁論終結時において、解約告知により消滅した。したがって、貸主の明渡請求は認められる。
実務上の射程
期間・目的の定めのない使用貸借でも、権利濫用や信義則の観点から解約告知が制限される場合があることを示す。答案上は、貸主による解約告知を認めることが著しく酷な事情を指摘し、本判例を引いて「信義則上相当な期間」の要否を論じる。また、訴訟中に期間が経過した場合の「告知の更新」の構成にも活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)1497 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一 建物の賃貸人が賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟を継続維持しているときは、解約申入の意思表示が黙示的・継続的にされているものと解すべきである。 二 建物の賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟において、右解約申入当時に正当事由が存在しなくても、右訴訟の係属中に事情が変更して正当事由が具備され…
事件番号: 昭和27(オ)494 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れがなされた場合、特段の事情がない限り、申入れの日から民法所定の期間を経過した時点で契約は終了する。本判決は、昭和22年2月25日の解約申入れに対し、6ヶ月経過後の同年8月25日をもって賃貸借が終了したとした原審の判断を妥当とした。 第1 事案の概要:本件では、賃貸人から賃借人…