原判示認定の事実関係のもとにおいては、本件建物の使用収益の目的を達するに十分の期間を経過したものと認めるのが相当である。
使用貸借において使用および収益をなすに足りる期間を経過したものと認められた事例。
民法597条2項
判旨
返還時期の定めのない使用貸借において、借主が目的物において特定の営業を行うという使用目的が定められている場合、その営業を継続するのに十分な期間が経過したときは、民法597条2項但書(現行598条2項)により解約をなし得る。
問題の所在(論点)
返還時期の定めのない建物の使用貸借において、特定の営業を行うことを目的として貸与された場合、民法597条2項但書(現行598条2項)にいう「使用及び収益をするに足りる期間」が経過したといえるか。
規範
返還時期の定めがない使用貸借において、借主が借用物を受け取った目的が「特定の営業を行うため」と認定される場合、当該営業の継続に必要かつ十分な期間が経過したか否かを基準に、使用収益をするに足りる期間の経過を判断すべきである。
重要事実
被上告人(貸主)は、昭和26年1月頃、上告人(借主)に対し、本件建物を期限の定めなく無償で貸与した。その際の使用目的は、上告人自らが建物内で酒類・醤油等の販売営業を行うことであった。その後、昭和36年12月に至るまで、上告人は当該建物を使用して営業を継続していたが、貸主が返還を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、上告人が本件建物内で酒類・醤油等の販売営業を行うという具体的な目的のために貸与がなされている。昭和26年の貸与開始から解約の意思表示がなされた昭和36年12月までの期間は約11年間に及ぶ。この期間があれば、当初予定されていた「自ら営業をなす」という目的を達するために必要な期間として十分であると解される。したがって、使用収益をなすに足りる十分な期間が経過したものと認められる。
結論
本件建物の使用収益の目的を達するに十分な期間を経過したものとして、使用貸借の終了による返還請求が認められる。
実務上の射程
特定の目的がある使用貸借の終了時期に関するリーディングケース。答案では「目的に照らした相当期間の経過」を論じる際、単なる年数だけでなく、営業の安定性や投下資本の回収、貸主との人的関係の変化などの具体的事実を拾って評価する際の枠組みとして用いる。
事件番号: 昭和39(オ)12 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
使用貸借の解約告知に基づく家屋明渡訴訟を維持し口頭弁論を行なつた場合には、もしさきの解約告知の効力が認められないとすればあらためて解約告知をなす意思を、弁論の都度表示したものと解すべきであり、告知の時期を異にすることにより、明渡請求権が別個の権利となるものではない。