行政財産の貸付については、貸付について定められた使用許可条項と国有財産法が適用される。
行政財産の貸付と私法の適用
国有財産法18条,民法612条
判旨
行政財産の使用関係において、使用者が無断転貸禁止等の許可条件に違反したことを理由に国が使用許可を拒絶し、返還を求めた場合、賃貸借における信頼関係破壊の法理に準じ、背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、当該拒絶は正当とされる。
問題の所在(論点)
行政財産の使用許可関係において、使用者が無断転貸禁止条項に違反した場合、信頼関係破壊の法理(民法612条2項の類推適用等)に基づき、国による使用許可の拒絶や返還請求が制限されるか。また、本件において「背信行為と認めるに足りない特段の事情」が認められるか。
規範
行政財産の使用許可に伴う私法的な使用関係の終了に関しては、民法上の賃貸借における無断転貸による解除制限の法理が妥当し得る。すなわち、使用者が許可条項に違反して無断転貸を行った場合であっても、それが国に対する背信行為と認めるに足りない特別の事情があるときは、使用許可の取消しや更新拒絶による返還請求は認められないが、そのような事情が認められない限り、許可条項違反を理由とする返還請求は正当なものとして是認される。
重要事実
国(被上告人)と使用者(上告人)は、従前の賃貸借契約を合意解約した上で、本件建物が行政財産であることを相互に認め、国有財産法の規定に基づく新たな使用許可を得て使用を開始した。その際、無断転貸禁止等の許可条項に違反した場合は使用許可を取り消し返還を命じ得る旨の合意がなされた。しかし、上告人は当該条項に反して政財界D社に本件建物の室を無断転貸した。これを受け、国は許可条項に基づき使用許可の更新を拒絶し、建物の明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和43(オ)362 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 棄却
賃貸借が裁判所の調停によつて成立し、その調停条項中には無断転貸禁止の条項があつたばかりでなく、賃借人に中間利得があり、賃貸人が本件解除前あらかじめ転借人に無断転借は承認できない旨を告知している等原審認定の諸事実(原判決理由参照)があれば、賃借人の義務違反の程度は強く、本件家屋の一部転貸が背信行為に当らないとはいえない。
あてはめ
本件において、上告人は行政財産である建物の使用にあたり、無断転貸禁止を含む許可条項を遵守する旨を合意していた。それにもかかわらず、上告人は政財界D社に対して本件室を無断で転貸しており、これは合意された許可条件に対する明らかな違反である。この無断転貸の事実に関し、上告人と国の間の信頼関係を破壊しないような「背信行為と認めるに足りない特別の事情」は、原判決が認定した事実関係のもとでは存在しないと判断される。したがって、国が許可条項に従って使用許可を終了させたことに違法はなく、権利の濫用にも当たらない。
結論
無断転貸について背信行為と認めるに足りない特別の事情がない以上、国が使用許可条項に基づき更新を拒絶し返還を求めることは正当であり、明け渡し請求は認められる。
実務上の射程
行政財産の使用許可という公法上の行為を背景とする関係であっても、実質的な使用関係においては民法の賃貸借法理(信頼関係破壊の法理)が参照されることを示唆している。答案上は、国有財産法上の使用関係であっても、私法上の法理をどこまで類推適用できるかという文脈で、解除や更新拒絶の有効性を判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)169 / 裁判年月日: 昭和41年7月14日 / 結論: 棄却
旅館を営業する建物賃貸人が新館を増築しながら、賃貸中の建物のうち付属建物部分の存在によつて正面玄関口が利用できないため、物置代りに使用しており、建物賃借人に対して賃貸借の解約申入をしたがその後当事者間で、二年後に右付属建物を明け渡せば六五〇万の補償金を支払う旨合意されたこともあるとともに、賃借人側においても、賃借建物全…